豊島逸夫の手帖

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為替介入、既に時期を逸す、NY市場の見方

2023年10月27日

今日も円安の話。
円相場150円突破はNY外為市場でも異例の注目を浴びている。特に為替介入に関して、10月26日の米国GDP発表前でなければ機を逸するとの見解が目立っていた。アトランタ連銀のGDPナウが2023年7-9月期の実質GDPを5.4%と予測していたからだ。市場では「まさか」との受け止めが多かった。仮にこれに近い数字が出れば、来週のFOMCでパウエル議長がタカ派的トーンに傾き、外為市場でのドル買い基調に拍車をかける可能性が指摘されてきた。

そして実際に26日に発表された数字は4.9%。9月雇用統計と9月米小売り売上高に続き衝撃的(blowout)と表現されるほど上振れした。そこで注目されるのは来週の11月FOMCでパウエル議長が現況をどう語るかだ。これまでは「強い経済成長の証拠がインフレの更なる抑制を危うくする可能性があり(could)、金融政策の更なる引き締めを正当化する可能性がある(could)」と表現してきた。今回も同様の発言をすると見られるがcouldがwouldに変わるだけでより強い表現になり、12月或いは1月の追加利上げに含みを残すことができる。NY外為市場ではそれだけで更なるドル買いに拍車がかかる。NYの通貨投機筋はFEDウォッチャーのこのような見解に注目して身構えている。それゆえ為替介入も日本の金融当局の立場に立てばFOMC前に実行しておくべきであったと考えるわけだ。
FOMC後にNY市場発、円安加速のシナリオに注意したい。

なお、米国GDPだが個人消費については危うさを指摘する声もある。コロナの自粛期間中に貯めこんだ貯蓄も底をつき、クレジットカードの支払遅延が増えていること。更に日本と同様にシニアの活発な消費に支えられているとの指摘もある。NY連銀の消費者調査によれば世帯年代別、月間支出傾向を1年前と比較すると40歳前が4.6%、40~60歳が5.1%、60歳以上が7.9%となっている。

2023年