豊島逸夫の手帖

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金1870ドル超えまで続騰

2023年10月12日

今日は中級者向け。
今、なぜ、金が切り返して上がっているか。異変は10月6日雇用統計発表後に起きた。新規就業者数は市場の事前予測18万人程度を大きく上回り30万人を超すサプライズ。市場の反応は11月追加利上げの可能性が強まることで株価下落、ドル金利上昇。ところがその後株価は反発、ドル金利は伸び悩んだ。この現象は当日の市場でも「謎」とされた。しかし今になってウォール街の話題になっていることだが、雇用統計発表後にサンフランシスコ地区連銀デイリー総裁がNYエコノミッククラブでの講演で「マーケットでの10年債利回り急騰が話題だが、これはFRB利上げを民間が先取りして動いてくれたと理解できる。FRBは動かずとも利上げ効果が出ているわけだ。」と述べていた。このデイリー総裁発言の後、10月9日にはジェファーソン副議長、ダラス地区連銀ローガン総裁が同様の発言でマーケット主導型の利上げを追認した。更に10月10日にはアトランタ地区連銀ボスティック総裁が「これ以上、利上げの必要なし」とまで言い切った。市場は市場で虚を突かれた。9月FOMCでのパウエル議長の想定を超えるタカ派姿勢を受け、追加利上げを先取りする形で10年債利回りの水準を切り上げていったところで、FRB側からあっさり「我々の仕事をやってくれた」とコメントされたからだ。

そこで今回のドル金利上昇の争点は米財政不安による米国債利回り上昇の方向へ移っている。そもそも今回のインフレの主因のひとつがバイデン政権のばら撒き財政とその結果としての米国債大量発行にある。ここはイエレン財務長官の管轄となり、パウエル議長が出張る筋ではない。しかし理由の如何を問わずインフレを抑制できなければFRBがその責めを負わねばならない。現行の金融引き締め・積極財政というポリシーミックスは経済合理性があるのだが、大統領選を控えた2024年は金融緩和への転換と積極財政となる可能性が強い。金には追い風となる中期的展開だ。

2023年