2023年3月13日
安全性と求めるマネーが金に流入している。
既に報道されているがシリコンバレーの中核的地方銀行SVBが破綻した。
過剰流動性からマネー収縮へ市場環境が急転回する中で、SPACや仮想通貨破綻劇に続き、米中小銀行セクターの「床下からゴキブリが出始めた」。ウォール街にも反省感が漂う。事が発覚するまでSVB担当アナリストたちから破綻リスクへの警告は全く聞かれず、予想株価も200ドル以上で500ドルさえ見られたことが話題になっている。因みに同銀行株価は先週木曜日に100ドル台まで急落後、金曜日には取引停止となったままだ。SVB株空売りをしていたヘッジファンドの人たちは、結果論だが先見の明があったと自画自賛している。総じて楽観的であった市場は猛省すべしとの掛け声がしきりに聞こえてくる。
マクロ視点では、3月FOMC利上げ幅やターミナルレート決定のための最重要級要因とされた雇用統計についての議論が吹っ飛び、インフレ抑制のための利上げか、金融危機回避のための利下げかというような議論が始まっている。まずは3月利上げ0.5%の確率が7割台から3割台まで一日で「暴落」した。QT(量的引き締め)も月額100億ドルから減額する案が語られる。
VIX(恐怖指数)も20割れの水準から20台半ばまで急騰した。
VIXの低迷に関しては、これまでも「金融環境の緩み」、「不気味な静けさ」と語られることもあった。
サンフランシスコ地区連銀デイリー総裁も従来はハト派であったが、最近はインフレ抑制重視のタカ派的発言が目立っていた。しかし今やお膝元での金融不安勃発に苦慮しているであろう。SVBはワイナリーとも取引関係があり、ナパバレーの生産者からの不安も報道されている。しかし3月FOMCを22日に控えFRB高官発言を控えるブラックアウト期間に入っており、市場は暗闇を手探りの状況だ。
SVB救済の動きは週末に進行してNY市場も休日返上で状況の変化を注視した。全ての預金者を保護と伝わるや一定の安堵感が時間外の市場で浮上した。
なお、リーマンショックとの比較もしきりに論じられるが、ここは冷静な判断が必要だ。リーマンショックでは低所得者層向け住宅ローンを束ねて証券化した商品が大量に世界中で出回っていた。しかし今回は多くの米銀が大量保有して金利高による含み損を抱えているのが国債とMBS(住宅関連債券)である。更に質への逃避として米国債が買われドル金利急落の一要因となった。10年債も2年債も利回りが一日で20ベーシスポイント(bp)を超える急落を記録している。その結果外為市場ではドル安・円高に転じた。
影が薄くなった感もある雇用統計だが、基本的に30万人超という雇用の強い伸びと失業率が微増とは言え依然3.6%という歴史的低水準にある状況は変わらない。労働参加率がやや好転傾向で平均時給の伸びが鈍化したことはインフレ抑制の視点で評価される。14日のCPI発表で金融不安要因との対比が深く議論されよう。
これらの状況を総合評価してNY金は買い。1800ドルの大台を彷徨っていたのが1870ドル台まで急反発。一時は1900ドルに接近の場面もあった。円高で相殺されても円建て金現物小売金価格は9000円を超えた。
なお、相場が騒然としてきたゆえ久しぶりにYouTube豊島逸夫チャンネルを土曜(11日)と本日(13日)2回更新した。
■3月11日(土)
2月雇用統計とリーマン危機後最大の米銀行破綻の同日進行
■3月13日(月)
緊急ライブ、シリコンバレー銀行、リーマン後最大の米銀破綻、月曜朝の最新状況