2023年1月30日
今年に入ってNY金価格が1900ドルを突破する急騰を演じている背景には、米国経済更に米ドルへの不信感があります。
米国経済は本格的インフレに見舞われ、中央銀行であるFRBはインフレ退治のためにドルの金利を急速に引き上げました。要は「金融引き締め」で米国景気を悪化させることで物価を下落させる戦略です。危ういですね。FRBの締め付けが厳しくなればインフレどころか重篤な景気後退=デフレになりかねません。事実最近の米国経済指標は不況のシグナルを示す数字が並んでいます。それでも不況よりインフレ退治の方が大事というのが今のFRBの政策なのです。下手をすれば不況とインフレの同時進行(スタグフレーション)になりかねません。
このような状況になると世界の投資家はドルを売り、金を買うようになります。元々歴史的には米ドルの価値の裏付けとして金が用いられていたので、米ドルの信用が傷つけば原点回帰で金を買う動きに出るわけです。
なお、短期的にはドルと金が同時に上がったり下がったりすることもありますが、長期的・歴史的には米ドルの価値が下がれば国際金価格は上がり、米ドルの価値が上がれば国際金価格は下がります。
日本人は資産と言えば殆ど円しか持たない国民でしたが、最近は虎の子の資産を円だけで持つことのリスクにも目を向けるようになっています。10年後の日本経済はどうなっているのかプロでも分かりません。このような不確実性が高い時代だからこそ、希少価値を持つ実物資産としての金が買われるのです。一時は仮想通貨の方が金より有利という考え方が市場を席捲しましたが、その仮想通貨市場が破綻して、結局「やっぱり金だよね」という考え方に戻ってきました。これは歴史的重みの違いとしか言いようがありません。