豊島逸夫の手帖

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NY金、FOMC翌日、急落

2023年2月3日

FOMC後の記者会見は同日NY市場大引け30分前に終わるので、じっくりとした結果の精査や消化は翌日に持ち越される。
今回は急騰していた金が急落した(KITCOグラフ緑線参照)。

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2000ドル視野の高値圏に入ったところで表層雪崩の如く利益確定の売りが噴出したのだ。FOMCでのパウエル発言が精査されると、市場の不透明感を強める結果になったので、短期筋は早々と売り手仕舞った。しかし表層雪崩の後には再び積雪が予想される。経済の軟着陸観測が強まったことが金売りの口実となったが、まだまだソフトランディングという楽観論を語るほどの目途が付いたわけではない。国際金価格は1900ドルの大台の値固めが続くと見る。いずれ2000ドル挑戦となろうが乱高下を繰り返し、じっくり価格水準を切り上げつつ上昇する相場の方が長持ちするものだ。

さて、以下に今回のFOMCに至る過程でのパウエルFRB議長の「トラウマ」についてまとめてみた。
パウエルFRB議長は痛恨の判断ミスを既に2回犯した。まず今回のインフレについて当初は「一過性」と頑なに主張したこと。2021年11月になって、やっと「一過性」との判断を撤回した。しかし本格的インフレを認めながら2022年3月までゼロ金利と量的緩和継続という超緩和策は維持した。これがふたつ目の判断ミスだ。この5か月の移行期間にインフレのマグマが市場の底流として膨張したので、パウエル氏にしてみれば悔いても悔いきれぬ思いではないか。結局インフレ対応は後手に回り、4回連続0.75%利上げという「劇薬」を処方するに至った。市場は3回目のミスは許されぬというパウエル議長のトラウマを感じ取っていた。それゆえインフレ減速傾向が明らかになった今利上げの出口という、これまた難題に関してパウエル氏が苦渋の選択を強いられていることを冷ややかに見守ってきた。利上げ打ち止めが早過ぎればインフレ再燃リスク。遅きに失すれば利上げ不況のリスク。そこでパウエル氏はあえて後者より前者のリスクを重視と明言した。インフレは手を緩めるとぶり返す習性があるからだ。それゆえ一定のリセッションは覚悟の上で、政策金利は5%超まで利上げ継続のスタンスをとった。思い起こせば2022年8月のジャクソンホール中央銀行フォーラムでは強硬利上げ継続論を8分間まくしたて、質疑応答もなく降壇した。市場はトラウマを背負い焦るFRB議長の胸の内を垣間見た。その後市場内では俄かに引き締め過ぎリスクが意識され、利上げも5%には届かぬ水準で停止を余儀なくされるとの見解が主流となった。更に利上げ不況対応で年内利下げへの転換もあり得るとの予測が台頭した。

このような市場環境の中で23年初のFOMCが開催された。市場の最大関心事はパウエル議長が年内利下げの可能性に言及するか否か。これは23年のマクロ市場展望に大きな影響を与える重大事項だ。

結果は「現状では利下げは適当ではないが、インフレ率下落ペースが速まれば、それなりの政策対応も考える」とのご託宣。

12月FOMC議事要旨には「2023年利下げを考えるFOMC参加者は一人もいない」と強い表現で記されていただけに、今回年内利下げを完全否定しなかったことだけで、市場はざわめいている。

果たして利上げはどこまで高く、どれほど長く続くのか。FOMC内部では5%超の金利水準を場合によっては年越しで2024年まで維持するとの意見もあった。来週にはFRB高官講演などでFOMC内の見解の相違も露わになりそうだ。

まずは今晩発表の雇用統計で月次新規雇用者数が10万人台まで下がれば労働市場過熱も一服の可能性も見えてくる。とは言え失業率が3.5%から悪化しないと利上げ強硬論が蒸し返されよう。

パウエル氏が利下げ、利上げいずれもあり得ると両論併記を語ったことで市場の不透明感は更に強まる結果になっている。5月FOMCまでは市場の視界不良は続きそうだ。国際金価格も上昇基調だがボラティリティーも激しくなりそうだ。特に2000ドル以上の価格圏がこれまで明確に値固めされた事例はない。短命で終わっている。筆者の上値予想は2100ドルだが、重要なことは2000ドルを突破した場合、高値圏が続くか否かということだ。そこには年内利下げ、有りや無しやが強く関わってくる。中央銀行の金準備増強の今後も重要な要因となろう。

血糖値を上げ、頭の回転を刺激するため「鯛焼き」を食しつつ(飲酒はしないよ)、モニター画面をウォッチする日々が続きそうな予感(笑)。

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そう言えば鯛焼きの聖地「サザエ」がある札幌は豪雪とか。大都市なので除雪後の大量の雪の処理が問題。筆者の札幌サテライトオフィスも実質稼働期間は6~9月が中心だね。

2023年