豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 国際金価格2000ドル台維持
Page3828

国際金価格2000ドル台維持

2023年126

週前半に大荒れした金市場もスポットで2020ドル台、NY先物2月限で2040ドル台あたりで一服している。

昨日は米JOLTS(求人件数)が前回の935万件から873万件に大幅減少したことで、労働市場の過熱感が薄れつつある印象を与えた。利下げを後押しする結果でもあり金には追い風となった。
しかし、同時に発表された重要指標であるISM非製造業景況感指数が前回の51.8から52.7に上昇した。50が好景気と不景気の境とされるのでサービス業が好転していることを示す。これは追加利上げの可能性を示唆するので金には逆風となる。
かくして、金にとって買い材料と売り材料が同時に出てその影響が相殺された。
その後、利益確定売りが出て下げに転じた。史上最高値圏ともなれば、これまで金を買った人は皆儲かっているわけで、潜在的利益確定売りの圧力は強い。

一方、売られて安値になれば、新規に買いたいという人も多い。
利益確定で売って儲けた人は成功体験により、下がれば金市場に再参入するケースが珍しくない。
結局、売り人あれば、買う人ありで2000ドル超のレンジが支えられている。昨日も後半には買い直され、結局価格水準に大きな変化はなかった。金価格高止まりである。

なお、今週は雇用統計が控えるので、そこで大きな動きが出そうだ。
これまでどおり月間新規就労者数が20~30万人に達すれば、労働市場過熱感が強まり、利下げの可能性が遠のき金は下がる。
逆に10万人を割り込むようなことがあれば、引き締めが効いているという解釈となり、利下げへの転換の可能性が強まる。
総じて、現状では来年の利下げに関して、市場の先走り傾向が顕著だ。FED WATCHによれば、来年5月までに利下げの可能性が何と9割に近づいた。極端な事例としては来年1月にも利下げを見込む確率が10%ほどまで増えている。パウエル議長にしてみれば「そんなことを言った覚えはない」と心外であろう。市場側が明らかに前のめり気味に先走っている。市場対FRB。どちらが正しいのか。筆者は慎重なFRBの方が正しいと見ているが。全ては今後のデータ次第。具体的には筆者は来年の利下げ時期を7-9月期と見ている。FRBの悪夢は利下げした後で株価が急騰して、個人投資家が儲かり、個人消費が過熱して(資産効果)、インフレが再燃。結局再利上げによる火消しに追い込まれるというシナリオだ。そうなればFRBへの信頼は失墜するので容易に利下げは決断できない。個人が物価はいつ急騰するか分からないと思う限り、インフレの根は残るのだ。

それゆえ金価格は利下げを受けて、急騰後、再利上げで急落という展開もワイルドカードとして意識しておく必要があろう。
中長期で金は上昇トレンドとは言え一直線で上がり続けるほど簡単なことではないということを言いたいのだ。
だからこそ上がった月には少なく買い、下がった月には多く買う仕組みの定額純金積立を長らく推奨しているのだ。金未体験者でも今からでも遅くはない。

2023年