2023年6月13日
レイ・ダリオと言えば、世界最大ヘッジファンドの創業者で米国人投資家にとってはカリスマ的存在だ。
今年正月の日経新聞でもその存在が大々的に紹介されていた。
崩れるドル基軸の世界秩序 レイ・ダリオ氏:日本経済新聞
そのカリスマが昨晩米国CNBCのテレビ番組に生出演して「金融危機のリスクがある今、金を資産の10~15%程度保有すべきだ。」と名言した。
カリスマを金保有に動かすほどのFOMC前夜の金融危機リスクとは何か。以下に詳説する。(中上級者向け)
■ 正解なきFOMC、市場は見切り発車
追加利上げすれば米国の多くの銀行が巨額保有する米国債の価値は更に下がる。民間では企業の資金調達コストが更に上がり、商業用不動産向け融資は不良債権化するリスクを孕む。かくして米国の銀行不安が再燃しかねない。
とは言え、追加利上げしなければ、からくも下落傾向は維持してきたインフレがぶり返す恐れがある。
6月FOMCだけでなく7月FOMCもこれまでの利上げがどれほど効いているのか様子見のため「FOMC動かず」となるかもしれない。否「動けない」という方が妥当か。
FEDウォッチでは7月利上げ確率が7割以上に達しているが、振り返れば5月FOMC直後には6月利上げ確率が急上昇していた。この確率の数値は市場心理に作用され乱高下するので、額面通り受け取り難いとの定評がNY市場では共有されている。
更に、市場が織り込んでいた年内利下げへの転換に至っては、FOMC内で「論外」と言わんばかりの語り口が目立つ。
結局、8月下旬のジャクソンホール中央銀行フォーラムでパウエル議長が強弁を振るい利上げ終了・高金利水準維持を告げる展開になるのか。昨年の同会議では同氏が8分間利上げ強行継続方針を一気に語り、質疑応答もなく壇上から去った記憶が未だに市場には生々しく残る。
市場が最も警戒するシナリオはトラウマの呪縛から抜け切れないパウエル議長が政策判断を誤るリスクだ。
そもそも2021年に今回のインフレが顕在化した時、同氏は「一過性」と頑なに主張した。同11月にやっと一過性ではないとの見解に転じた。しかし2022年3月までは超金融緩和政策を維持した。その間インフレというマグマは市場の底で沸々と膨張していた。インフレ対応が後手に回ったことで同氏は0.75%刻みという大幅利上げを連発した。しかし金融政策効果判定には1年から1年半かかると言われ、今回の6月FOMCではインフレ指標を見極めるべしとの意見がFOMC内部でも大勢となった。とは言え7月以降については意見が割れている。最後に判断するのはパウエル議長だがこの難局に臨み同氏が再び「痛恨の判断ミス」を犯すことは許されない。ホワイトハウスからも景気を悪化させ失業者を増やすことでインフレを抑制する金融政策に対する政治的圧力が強まるのは必至だ。
このような危うい市場環境ゆえ多くのファンドは利回りが5%を超える短期米国債を保有することで凌いできた。しかし債務上限問題が暫時決着したところで金庫が空になった状態の財務省は1兆ドルを超える短期債発行を強いられ米国債市場に新たな乱高下リスクが発覚した。ここではAIブームだろうが、AIバブルだろうが取りあえず債券よりは株の方がマシとの相対的判断が働く。更に株も債券も不安なら「金」という選択肢が浮上する。
見切り発車だが現場のトレーダーはいつまでもキャッシュ保有で模様眺めという訳にはゆかない。米国株に偏り過ぎた株式ポートフォリオの国際分散も喫緊の課題ゆえ日本株買いもFOMC後に加速する可能性がある。但しドル高円安も加速するリスクがあり植田日銀には海外勢の手荒い洗礼が待ち受ける。
以上
さて、超多忙が続きブログの更新間隔が空いた。毎年6月上旬は年前半を回顧して年後半を展望するようなイベントなどが多いのだが、今年は特にあれこれ集中してアップアップだったよ。その間金価格はFOMC前で大きな動きがなかったのでブログはスキップ。利上げもスキップか。