豊島逸夫の手帖

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相次ぐドル金利6%発言、円140円接近、投機筋深追いも

2023年5月25日

5月FOMCで「利上げ打ち止め」が強く示唆されたが、今や「6月は利上げを1回休んでも7月に利上げ再開があり得る」との見解が出始めた。
更に利上げの終着駅であるターミナルレートは6%に達する可能性が相次いで公言された。

まず、最近タカ派発言が目立つミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁が「インフレ率2%ターゲットを達成するためには(政策金利を)6%以上に引き上げることも排除しない」と明言した。
更にセントルイス地区連銀ブラード総裁があと2回利上げすることがインフレ鎮静化のためには必要」と語った。同氏は6%という数字は明示しなかったが、あと2回の利上げならば、政策金利は5%台後半に突入することになる。

米国最大の銀行JPモルガンのダイモンCEOも論戦に参加。「足元で3.7%程度の10年債利回りが6~7%まで上昇することに備えよ」と檄を飛ばした。
更に23日の米国債入札で超短期証券(期間21日のキャッシュマネジメントビル=CMB)の落札利回りが遂に6.2%を付けた。これは明らかに6月初旬がⅩデーとされる米債務上限の期限の影響である。因みに理由の如何を問わず投資家は超短期証券ながら年率6.2%の利回りを得たことになる。

かくしてドル金利6%情報が様々な形で市場に流れている。
政策金利6%説はカシュカリ総裁が今年のFOMCで投票権を持つとは言えまだ少数派だ。
24日に発表された5月FOMC議事録では追加利上げを巡り意見が分かれていたことが判明した。既にシカゴ地区連銀グールズビー総裁は「5月利上げが際どい判定であった」と明かしていたところだ。
同じ24日にはウォラーFRB理事が「物価上昇率が2%の目標に向かって減速しているという明確な証拠が得られない限り、利上げ停止を支持しない」と語り、FRB内部亀裂を露わにした。

なお、23日に発表された米サービス業PMIは55.1と好不況の節目とされる50を大きく上回った。同製造業PMIが48.5と低迷している状況との対比が鮮明だ。
パウエルFRB議長はかねてから労働集約的なサービス業の賃金が下がらず、最も頑固なインフレ要因になっていることを危惧していた。FRBが重視するPCEインフレ率はコアで4.6%まで下落しているがここからが胸突き八丁だ。サービス業由来のインフレを抑え込むためにはやはり利上げの選択肢を残す必要があろう。なお、4月のPCE(米個人消費支出)インフレ率は今週26日に発表される。

但し、FRBは更なる利上げが地銀危機を悪化させるリスクも考慮せねばならない。従ってパウエル議長は極めて危うい綱渡りを強いられる。市場も極めて神経質になっている。通貨投機筋が荒らしやすい地合いとも言える。
6%という数字が市場を独り歩きするとアルゴリズム取引が6%というキーワードに反応して、機械的にドル買い・円売り注文を連射的に発動しやすくなる。

とは言え、6%説が少数派である限りはこれ以上の円安基調は限定的だ。しかし来る6月FOMCでの議論次第では145円も視野に入る可能性はある。昨年150円超まで円売り攻撃を連発した国際通貨投機筋が今年はおとなしかったが、俄然円を再び売りの標的に投機的に動く姿勢が垣間見えるからだ。
植田日銀にも海外から手荒い洗礼が待ち受けている。

なお、昨年とは異なりドル高・円安でNY金価格は1950ドル台まで下げている。

2023年