2023年3月15日
14日に2月CPIが発表になった。ヘッドライン年率6%、コア5.5%。
NY金はKITCOグラフ緑線の如く1900ドル線上で行ったり来たり。
為替は円安に振れ、円建て金小売現物店頭価格は50円上がり9100円。
筆者がCPIで注目しているのは、パウエルFRB議長が最も注目している「住居費を除くサービス業」の価格動向であった。徹底的に最も頑固な労働集約的サービス産業に絞り込んだ指標なので、市場ではスーパーコアとも呼ばれる。パウエル議長は7日の上院議会証言の冒頭で「消費者支出の半分以上を占めるスーパーコアにディスインフレーション(インフレ鈍化)の兆しが見られない。」と語っていた。2月1日のFOMC後の記者会見では「スーパーコアの部分だけを取り出せば4%程度」と答えていた。それが今回は3.7%まで下落したのだ。ここはパウエル議長が間違いなく歓迎するであろう。金には売りの材料となる。
とは言え、CPIの1/3ほどを占める住宅費が前月から0.8%、年率で8.1%も急増したことは気になる。しかしパウエル議長は議会証言で「最近の賃貸契約動向を見るに既に頭打ちは明確で今後低下してゆく。」と予測している。そもそもCPIは集計にも手間取るので遅行指標で6か月ほどのラグがあるとされる。それゆえパウエル議長も上記の発言では「最近の賃貸契約動向」と先行的参考指標を引き合いに出していたのだ。史上最速利上げの効果はこれから本格的に出てくることが考えられる。
このシナリオを基にすれば、仮に22日の3月FOMC時に市場の金融不安感が後退しつつあれば、3月の利上げ幅が0.25%となる展開が考えられる。
とは言え、金融不安に関してまだまだ楽観的にはなれない。
市場目線での要注意は格付け機関の判断である。危機的状況の時に引き金を引く役回りになり易いからだ。
14日にはムーディーズが銀行セクターの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。FRBの緊急融資を財務省がバックストップする措置が発動されても、含み損を抱えた保護されない顧客もいる金融機関にはリスクが残るとしている。
かくして、FRBは物価の安定と金融システムの安定の狭間に揺れる。市場のボラティリティーも高まる。
14日のNY市場は黒海空域でのロシア機と米無人機衝突の第一報が日中に入るや、それまで400ドル以上上げていたダウ平均株価が瞬時に急落。しかし引けにかけ空売りポジションが買い戻され336ドル高で終えた。一時は「暗黒の火曜日か」と言われるほど緊張感が高まった。こういう偶発的か意図的な軍事衝突は地政学的リスクとして金には買い材料となる。
今晩はPPI(卸売物価指数)の発表が控える。