豊島逸夫の手帖

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雇用統計に金は反応薄

2023年11月6日

注目の10月雇用統計は前月比15万人増。市場予測の18万人増を下回り、失業率も予想外に3.9%へ悪化。約2年ぶりの高水準である。雇用数が伸び悩み、失業率が悪化するのはFRBの引き締め政策の効果と市場は見ている。更に平均時給も前年同月比で4.1%上昇と2021年半ば以降で最も小幅な伸びとなった。
この雇用統計の結果を見る限り、FRBは追加利上げすることもなく、インフレ減速は続くことになりそうだ。株式市場は10月雇用統計を歓迎している。

しかし、今最も注目されていることは5.25~5.5%の高水準にある米政策金利が来年のいつ頃までホールド(維持)されるか、更に利下げはいつのことかという点だ。
パウエル氏も1回の雇用統計がインフレ減速を示唆しても、それはひとつのデータポイントに過ぎないと常に説いている。

国際金価格も雇用統計発表直後は急騰したが、その後反落して雇用統計前の水準まで戻っている。冷静な反応だ。
米債券市場では10年債利回りが一時は5%を突破して話題になったが、今や4.5%まで下がってきた。これは景況感の悪化による下落と見られる。

先週発表されたISM非製造業指数は51.8と5か月ぶりの低水準。更にISM製造業指数も46.7と景気拡大・縮小の分岐点となる50か月連続で下回った。
因みに雇用統計もISMも全米自動車労働組合(UAW)のストライキによる影響が無視できない面もある。

国際金価格に関しては「忍び寄る不況の影」が下支えになっている。
対照的に株式市場は追加利上げ回避できれば米経済軟着陸も可能と楽観的だ。
来年は不況と見れば金を買い、好況と見れば株を買うというところだ。市場には様々な見方が共存するのが普通の姿と心得る。

為替市場では雇用統計後のドル金利低下を映し、149円台の円高に振れた(149円で円高とされる時代になったか)。中期的にはまだドル高の基調に変わりはない。
為替介入が引き続き話題になっているが、もし筆者が介入担当だったら雇用統計後にドル安に振れた時に畳みかけるようにドル売り・円買い介入するだろうね。短期的市場の流れに乗った介入の方が逆らう介入より効果があるものだ。

2023年