豊島逸夫の手帖

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NY金、史上最高値接近のカラクリ

2023年11月30日

国際金価格は続伸。利上げ終了。利下げ視野の可能性が強まり、ドル金利低下もドル安も同時進行している。金価格が上げやすい市場環境と言えよう。

但し、ひとつ注意事項がある。
NYMEX金先物取引所で最も取引が多い中心限月がこれまで12月ものであったが、これが2月ものに「交代」する時期と重なった。
具体的にはNYMEX12月限は2048ドルだが、2月限は2068ドルとなっている。外電報道でもNY金は2068ドルとされる。いきなり20ドルも限月交代で上がってしまったわけだ。2068ドルとなると史上最高値2089ドルに一気に接近する。
対して本欄では一貫して現物のスポット価格を使っている。

おなじみのKITCOグラフでは緑線が2040ドル台で推移している。

3824.png

なお、日経はNY金で表示しているので、このままゆくと一足早く史上最高値と書くかもしれない。

それからドル安で国際金価格が上昇ということ。
ドル高でも上がったではないかとの疑問が生じる。
結論から言うと金はドルの代替通貨と言われるように、ドルの価値が下がれば金価格は上昇する。

ドル高でも金が上がったのは長期的にドルに対する不信感(国際基軸通貨としてのドルへの信認低下)が高まっているからだ。中央銀行が外貨準備でドルを減らし金を買ったことが象徴的だ。この不信感は日々、外為市場で当日ドル高になろうとドル安になろうと変わらない。

なお、ドル金利安・ドル安で円は高くなった。それでも昨日は円建て金価格が史上最高値を更新した。円高と言っても147円だからね。数年前に147円なんて言ったら「超円安」と言われたものだ。

来年は米利下げとともに日米金利差が縮小して円高に動くとの見解が増えてきた。しかしFRBはまだ2%のターゲットからは遠く、インフレはしつこく、場合によっては追加利上げも辞さずの構えだ。

市場の利下げ期待感とFRBの「そう簡単には政策金利を下げられないよ」という立場のギャップがこれからどう推移するのか注視したい。日銀は大して動けないので、結局はFRB次第ということになる。このあたりの議論は今月号の日経マネーの別冊で尾河眞樹さんと対談したので参考にして欲しい。かなり中身の濃い内容になっている(亀池との金3人衆の鼎談より面白いかも(笑))。

今後FRBが重視するPCEインフレ率とか雇用統計とかCPIとか重要指標が目白押しだ。日々の価格変動性(ボラティリティー)は激しくなりそうだ。

2023年