豊島逸夫の手帖

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CPI下振れ、ドル建て金は急騰、外為は円高

2023年11月15日

3818(KITCO).jpg注目の10月CPIは重要なコアインフレ率が下がり、金価格はKITCOグラフ緑線に示されるように急騰した。追加利上げの可能性がゼロになったのだ。金利を生まない金には朗報である。外為市場ではドル金利が下落して円高に振れた。と言っても150.60円程度だが(これを今時は「円高」という)。

以下は詳説。

「インフレ減速が確認された。さすがにパウエル議長の言い回しも変わるであろう。」
無風が予測されていた12月FOMCへの注目度が俄かに上がってきた。
特に14日に発表された米消費者物価指数で、最も注目されることは、最も重要視されるコアCPIの上昇率が23年6-10月期の5か月に年率2.8%まで下落したことだ。同年1-5月期には5.1%と高止まりしていた。

更に、FRB高官発言のニュアンスも既に変わってきた。
今年FOMCで投票権を持つシカゴ連銀グールズビー総裁は「インフレ減速は失業率が殆ど変わらない中で、40年ぶりのペースで進行している。これはコロナ由来の供給障害がリバウンドして、生産性も向上、更にインフレ期待が落ち着いていることによる。敢えて注意点を言えば住宅関連のインフレか。インフレとの闘いは常に荒い道のりだ。」と語っていた。

但し、同氏はCPI発表前の9日のウォールストリートジャーナル紙のインタビューで「ドル高金利が実体経済を想定以上に冷やすリスクに注意せねばならない。」とも語っていた。金融政策の効果が出るのは1年~1年半後程度とされ、今後潜んでいた悪影響がタイムラグをもって顕在化する可能性には引き続き目配りせねばなるまい。

更に、来年FOMCで投票権を持つサンフランシスコ連銀デイリー総裁は11日の米経済テレビ出演時に「インフレ抑制の進展が失速し、経済が力強く推移する場合、政策金利を再び引き上げざるを得なくなる可能性がある。」と警鐘を鳴らしていた。
同氏はFOMC内でハト派の主導格とされているだけに、今回のCPIの結果に対してどのようにコメントするか注目されている。
事程左様に慎重であったFRB高官たちが今後どのように発言を修正するのかNY市場は見守っている。

当面の市場の反応としては12月と1月の追加利上げの可能性は「ゼロ」になった。問題は利下げの幅と時期にシフトしている。これまでは来年6月以降という見解が支配的であったが、14日には「早くも24年3月にも」との意見が浮上している。

なお、本日には米小売売上高と生産者物価指数(PPI)という重要指標が発表される。CPI祭りに火を注ぐのか、冷や水を浴びせるのか注目される。

2023年