豊島逸夫の手帖

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先走る市場の利下げ観測、スピード違反の可能性も

2023年127

5日に発表された米JOLTS(求人件数)が前回の935万人から873万人へ急減したことで、労働市場の過熱が収束しつつあるとの市場の解釈に基づき、民間の利下げ観測がこれまで以上に強まった。
米国の政策金利であるフェデラルファンドの先物取引(fed fund futures)によれば、2024年に予想される各月の政策金利は以下のとおりになる。

          現在 5.4%
          4月 5.2%
          7月 4.8%
          8月 4.6%
         10月 4.4%

因みに2025年1月には4.0%が予想されている。
更に、来年5月までに0.25%利下げする確率は42%、0.5%利下げの確率は40%に増えた。来年1月に利上げの確率も12%となっている。
その主たる根拠の中にはパウエル議長が最も重視しているスーパーコアインフレ率が、今年9-11月期と同5-8月期を比較すると2.73%まで下がってきていることが挙げられる。
スーパーコアとはエネルギーに加え、変動の大きい家賃も差し引いた数字で、最も頑固とされるサービス業の家賃に特化したインフレ指標だ。年単位の前年同期比では3.9%、6-11月期と22年12月―23年5月の6か月比較では3.05%となっている。
それにしても市場の観測が先走り加速していることは気になる。今週は12月FOMC前のブラックアウト期間中でFRB高官の発言は控えられている。それゆえ市場も発表されたJOLTSに対するFRB高官のコメントを聞くことができず暗中模索の感がある。
そもそもfed fund futuresの売買そのものが投機的取引ゆえ、日中でも利下げ確率の数字はしばしば変わる。
FOMC参加者のFF金利予測は12月FOMC時に発表されるドットチャート(参加者の金利予測の分布)で明らかになる。恐らく慎重にデータを検証して決める姿勢のFRB側はかなり異なった予測を示すはずだ。
米10年債利回りも一時は5%を超えていたが、今や4.1%まで急落中だ。債券市場で短期間にこれほどの値動きが見られることは稀だ。ここではやはり債券投機筋の売買の影響が滲む。

2023年