豊島逸夫の手帖

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150円突破、NY市場の次の一手は

2023年10月4日

3日日本時間午後11時のことだった。
注目のJOLTS(求人件数)の発表。961万件と事前予測880万件から上振れした。米労働市場の強さを見せつける如き結果にNY市場は動揺した。11月追加利上げの有力な根拠のひとつになり得る。米債券市場では10年債利回りが4.7%台から4.75%台へ跳ね、その後も更に5ベーシスポイント(bp)ほど続騰した。

同時に外為市場では瞬時に150円を突破した。
しかし、次の瞬間相場モニターは148円台を付けていた。明らかにドル金利高=ドル高の市場の法則に反する値動きだ。価格グラフを見れば、午後11時に150円台から148円台まで、崖から落ちる如き様相だ。
多くの市場関係者は「すわ、いよいよ為替介入か」と色めきだった。筆者も例外ではなかった。
しかし、その後の円相場は細かな動きはあるものの、概ね148~9円のレンジで推移した。

「利益確定の円買い・ドル売りか」
「いやいや、日本の財務省と日銀の足跡だらけだ」
「所謂スムージングオペレーションであろう。円安のスピードにブレーキをかける程度で、力ずくで140円まだ持ってゆこうという意図は感じられない」
「米国債が一気に10ベーシスポイント(bp)も急騰する中で、誰がドルを売るか」

市場の意見は割れる。
ただ注目すべきは148円台でNY市場では「円安の波に乗り損なった出遅れ組」が円を売った痕跡が明らかなことだ。
為替介入などで円上昇を待っている人たちが未だ相当数残っていたことが図らずも露わになった。

何せ2007年以来のドル金利急騰の大波に日本の金融当局だけが逆らっても勝ち目は薄い。それを一番分かっているのは日銀現役の諸兄であろう。
今回は求人件数であったが、今月は雇用統計、消費者物価指数、雇用コスト指数など重要指標が目白押しだ。その度に150円攻防戦になるのか。すべてはデータ次第。10月は155円を目指す動きになるのか。或いは本格為替介入で140円までの円高に振れるのか。

それにしても日本金融当局も為替介入をやるならば、NY市場でアウェーのゲームを強いられる。強者たちが「いざ、お手向かい致す」とばかり控えている。昨年の為替介入より遥かに難しい市場環境と言える。日銀が新総裁を迎えても金融政策の選択肢が限定的だ。日本では大事でも0.75%刻み利上げ3連発など荒業を繰り出してきたFRBと比較すれば、YCCをいじる程度で小粒と言わざるを得ない。だからこそ日本の為替介入を新規参入の機会として狙っている輩が少なくないのだ。
まず11月FOMCまではNY主導の円相場形成が続きそうである。

2023年