豊島逸夫の手帖

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5、6月米利上げあるか、いきなり次期日銀総裁に試練も

2023年2月15日

「FRBと市場のドル金利予測の違い」が注目されてきたが、CPI発表により、ついに市場がFRBにすり寄ってきた。市場とFRBが予測するターミナルレートが5%超のほぼ同水準に並んだのだ。年内利下げ転換説も風前の灯。マーケットは敗北を認め、市場の合言葉も「FRBを疑え」が「FRBには逆らうな」に変わった。

本欄で言及してきた3、5、6月の「ダメ押し利上げ」(insuranceと表現される)の可能性も高まっている。
あと3回の利上げが現実になれば、時あたかも4月に旗揚げする予定の植田日銀への円安再燃が最初の試練となろう。

NY市場の国際通貨投機筋と話していると手ぐすね引いて待ち受けている印象を受ける。今後のFRBダメ押し利上げの実行状況を見極めつつ新日銀のお手並み拝見という本音が透ける。円高の本番は年末近くになりその前に一仕事という感覚が伝わってくる。

なお、14日日本時間午後10時半に発表されたCPIだが、その後2時間ほどは解釈や消化に手間取った。CPIは遅行指標であり「バックミラーを見て論じる」リスクが意識されたからだ。結局本格的に反応し始めたのは日本時間で15日になってからのことであった。「引き締め過ぎるリスクより引き締め不足のリスクを重く見る」と明言するパウエル議長や地区連銀総裁の発言が効いた。CPIについてもFRBは最も頑固なサービス業価格を重視する「スーパーコア」を現状は4%前後と見込み、まだインフレ退治への道は遠いとの認識を明らかにしている。

この強行姿勢に屈した市場では政策金利に連動する傾向が強い2年債が4.4%台から4.6%台まで急騰。10年債との長短逆転金利差も今回の逆イールド現象の最大値水準である80ベーシスポイント(bp)を超えた。リセッション覚悟でぶり返しやすいインフレを根絶やしにする意図が露わだ。米国株式市場の軟着陸説も影を潜めた。株価強気派の代表格ウォートン・ビジネス・スクールのシーゲル教授も早速テレビ番組の生出演に引っ張り出され、渋々期待された利下げが来年にずれ込むと強気の見解を修正した。

円相場も一時は133円台を超えた。
このような市場環境で国際金価格は1800ドル台半ばでKITCOグラフ緑線の如く乱高下している。
1月雇用統計サプライズを機に金市場の潮目に変化が見られる。本日発表の小売り売上高にも要注意である。

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さて、今日の写真は名古屋の老舗みりん粕漬「鈴波」@東京ミッドタウン。上品な味付けで筆者の好み。
最近は鈴波と虎屋の組み合わせが増えたな。

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2023年