豊島逸夫の手帖

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金、一時2000ドル突破

2023年11月22日

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NY金市場の潮目が変わった。
震源地は米債券市場。これまでドル金利高を見込み、米国債を空売りしていた投機筋が、感謝祭やクリスマスの休日を控え、買戻し(巻き戻し)に動いた。10年債利回りは一時5%を超えていたが、今や4.3~4.4%のレンジまで急落している。
金利を生まない金の価格はこの債券市場の波乱と並行して上昇。因みに円相場もドル売り・円買いに動いた。

一方、FRBはインフレ再燃を恐れ、追加利上げの可能性を捨てていない。昨晩発表の11月FOMC議事録でも、全員が追加利上げを否定しなかった。但しこの11月FOMCは先週のCPIショックの前の話だ。10月CPIがインフレ減速を示したことで潮目は変わった。おそらくFRBはこのCPI改善だけではノイズ(雑音)と切り捨てるだろう。あくまでpatient(辛抱強く)、経済データを確認してゆく姿勢だ。既に今週リッチモンド連銀バーキン総裁は「追加利上げも考慮」を述べている。しかし市場は先走りして追加利上げの可能性を「ゼロ」と見ている。更に来年5月に引き締めから緩和に転換する可能性を60%以上と見ている。FRBと市場の見解の差が鮮明だ。パウエル議長は政策転換など論外のような口調で語ってきた。

金市場もFRBを信じておらず2000ドルまで突っ走った。特にこれまで金空売りに走っていた投機筋は買戻しに動いている。
金価格に関して結論は中東リスクが下支えとなり、ドル金利低下を映し、更に利上げの副作用としての米経済景気後退を織り込み、着々と価格レンジを切り上げてゆくだろう。

ドル円は147円まで円高に振れたが議事録で148円に戻した。こちらは円安の潮目の変化とは言えない。
円空売り、或いは円キャリーに走っていた投機筋が買戻しに動いているということだ。

2023年