豊島逸夫の手帖

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米インフレ、最後の1マイルに暗雲、利下げ議論にも一石

2023年12月21日

今日は、前半は真面目な議論。後半は雑談。

まず国際金価格は引き続き2030ドル台。
米国ではFRBのインフレとの戦いで、最も手強いのは3%台から2%で安定的に推移する状態までの「最後の1マイル」と言われてきた。そしていよいよインフレ率は3%台の数字が多くなってきた。市場はこの調子なら最後の1マイルも問題なく通過して、FRBは早期に利下げに転じ、金融政策の軸足も物価から徐々に雇用に移すと見始めた。FRBも高官発言から察するにまんざらでもなさそうであった。

ところが20日発表されたコンファレンスボードの12月消費者信頼感指数が、事前予測104のところ110に大きく上振れ、市場はこれがあの1マイルにはだかる難敵かと思い知った。同日リッチモンド地区連銀バーキン総裁も「インフレとの戦いが終わったわけではない。今後の経済データを見守りたい。We will see what happens(どうなるか様子を見る)」と語った(因みにこの英語表現は植田総裁も海外講演で使う)。

総じて市場の軟着陸楽観論に冷や水の展開だ。20日のダウはこの経済統計発表直後から売りが優勢となり500超の急落を演じた。連日米株価上昇記録もストップした。

とは言え、この株価急落に安堵しているNY市場関係者も少なくない。あのままバブル的な様相で米株価が上がり続ければ、金融環境の緩みの典型的な一例とされ、市場が期待する利下げにはFRBが慎重になりかねないからだ。

一方、米債券市場はこの良い経済統計を無視して、10年債利回りは上がるどころか3.8%台まで続落した。データ次第ではなくデータ無視で我が道を行き債券買いに突っ走る市場は、もはや理論で説明できる状況ではない。モメンタム(市場の勢い)に乗った債券先物投機筋が牛耳っている。20年物国債の入札不調の結果も無視された。

市場をマクロ目線で見れば、22日にPCEコアデフレーター、耐久財受注、個人所得、個人支出、新築住宅販売件数、ミシガン大学消費者信頼感指数などの重要データ発表が集中する。週初めには今週は金曜まで様子見を決め込むと語るトレーダーも多かった。しかしクリスマス休暇直前の思いがけない市場の成り行きに動揺が広がっている。

このような金を取り巻く情勢の変化に金価格は一時急落したが、持ち直し2030ドル台を維持している。安定的と言える反応だ。

さて、昨日は日経ニュースプラス9に生出演して、専ら日銀と株の話をした。日経電子版マーケット面の筆者コラム「豊島逸夫の金のつぶやき」との連動企画で、今後は月1回程度のペースで継続される予定。外為・株・債券が中心になる。基本的に筆者は「金は世界を映す鏡」と見ており、この40年間、常に金を取り巻く株・外為・債券も毎日フォローしてきたので違和感はない。電子版読者からは「豊島さんは金にも詳しいのですね」と驚かれたりするので、「まぁ、ひととおりは」などと答え、相手も納得しているのを見て、面白がっている。「金の世界のことはご存知ないようですが、亀井先輩や池水先輩という業界有名人がおりまして、お世話になっています!」などと言うと、本気にするので「私の方が若く見えるのね」と一人合点して、家族には「なわけねぇだろう」と一蹴されているのだが(笑)。

なお、写真を添付したがテレ東の並びの控室に「関ジャニ∞」とか「さまぁ~ず」の名前が並んでおり、これまた笑えた。関ジャニ∞は以前朝日放送の「正義のミカタ」というエンタメ型情報番組の常連だった頃、一緒に出演したので芸能界世事に疎い筆者でも覚えている。

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2023年