豊島逸夫の手帖

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国際金価格、1870ドル台まで急落

2023年9月28日

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1900ドル台の攻防を続けていた国際金価格だが、27日にはアジア時間朝からずっと下げ続け、NY時間には1870ドル台まで下がった。

何と言っても要因は本欄で繰り返し述べた9月FOMCでのパウエルFRBによる、政策金利は「高く、長く」のメッセージだ。インフレ率は段階的に下がってきたが、まだFRBの視点から見れば不十分。年内追加利上げ(11月)も排除せず、さらに来年の利下げも4回から2回に回数が減らされた。市場もそれを受け入れざるを得ず、10年米国債利回りは4.59%、2年債は5.12%を超えた。今の時期にこんな高金利になるとはNY市場関係者も全く想定しなかった。株式市場を支配していた楽観論(経済軟着陸説)はもろくも崩れた。金市場にとってもありがたくない話である。
ここまでは26日までの話。

そして27日にはNY時間で、耐久財受注が前月比0.9%増と大幅な伸びを示した。FRBの利上げの効果がまだ出ていない、或いは不十分との解釈が出た。

さらに原油価格が続騰。FRBはインフレ率のコアを重視するが、国民の立場では家計を直撃するので無視できない。これも市場にとって、この時期に原油急騰かとのサプライズ感をもたらした。やはりFRB議長も原油急騰を受け止め、追加利上げを急ぐとの解釈が出始めた。

それでは今後はどうなる。
結論から言うと、利上げの副作用である不況、並びに銀行不安は金利が「長く、高く」なれば必ず出てくる。ここが一番大事なところで金の下げも限定的と見る所以だ。

原油急騰にしてもガソリン値上げが家計を直撃すれば、他の消費を削り、消費性向は下がる。GDPの7割は個人消費であり、景気後退感が顕著になろう。

さらに政府機関閉鎖もますます現実的になり、ムーディーズが米国債を格下げの前段階(credit watch)にした。もしムーディーズが格下げに踏み切れば、S&P、フィッチと大手格付け機関が全て米国債をトリプルAから格下げすることになる。これだけでも金を1900以上に戻す力がある強い材料だ。

当面は弱含みとしても中期的には1900ドル以上に戻す。
来年のことまで言うには早いかもしれないが、来年は1900ドルがレンジの下限値となろう。来年の高値はまだちょっと待って(笑)。

さて、今日の写真は紅玉を使ったアップルパイ。自家製。紅玉は傷みやすいのであまり出回らない。ある時には買ってアップルパイにして楽しむ!

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2023年