豊島逸夫の手帖

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国内金小売価格1万円超え、売りか買いか

2023年8月30日

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29日のNY市場でドル建て金急騰。1914ドルから1939ドルまで急騰。
要因はふたつの米重要経済指標の悪化。

まず、コンファレンスボードの消費者信頼感指数が事前予測116を大きく下振れ106。特に消費者の雇用・賃金に関する将来への期待感が後退している。
次に、米求人件数が事前予測950万件を大きく下回り882万件。一時は1千万件の大台を超えている状況が続いていたので、かなり減ってきた感じ。失業者一人あたりの求人件数は1.5程度になる。これも一時は2の大台に接近していた。

市場には不況の足音が聞こえる感覚が強まり、金には追い風となった次第。但し今週は今日以降も重要指標発表が続くので、流れとしては「荒れる9月」の前哨戦といったところ。まだ始まったばかり。ジェットコースター相場の予感もありシートベルトは低く強めに。

基本的にジャクソンホールでパウエル議長が逃げまくったので、市場は真意を読めず、神経質になっている地合いゆえ投機筋には草刈り場となる。なお不況の前兆とされる逆イールド(米長短金利差逆転現象)も今月は65ベーシスポイント(bp)まで縮小していたが、昨日は84ベーシスポイント(bp)までまたぞろ拡大してきた。まさに不況の足音そのもの。

ドル円もNY時間で大荒れ。一時147円突破したかと思えば、経済指標悪化で一気に145円台まで戻した。
それでも円建て金価格は堅調と言える。

ただひとつ警告しておきたいことは、FRBが来年4月以降に利下げに転じると筆者は見ている(おそらく2024年後半にずれ込む)。これは強いドル安円高要因ゆえ2024年には120円台と見ている。これは中期の見方。長期では筆者の筋金入り円安論は全く変わらず。要は年々で見れば円高の年もあって当然というところ。市場は先取りして動くから今年年末くらいには中期的基調転換があり得る。ここは今後の経済データとFRB高官発言を見極めたい。現時点でFRBは利下げなど論外との姿勢だ。

そしてドル安になればドル建て金価格は上昇する可能性が強い。長期投資家の国際基軸通貨としての米ドルへの信認は低いままで、短期的な外為市場のドル相場もドル安(円高)になる。NY金価格が上がっても為替要因で相殺される地合いとなろう。これは円建て金価格の高止まりを意味する。
じっくり金を買い増す投資家なら慌てることはない。これまでどおりジックリ構えて臨むべき。

2023年