2023年6月5日
先週金曜日に発表された注目の5月雇用統計は、新規就労者数が30万人を超え、更に前月分も上方修正された。これだけ利上げを続けても新規雇用が増え続けるということは、まだ金融引き締めが手ぬるい。もっと利上げすべしとの議論が熱を帯び、金価格には逆風となったのだ。
とは言え、失業率は3.4%から3.7%に上昇している。パウエルFRB議長はかねてから「失業率が良すぎる。4.5%程度まで悪化してもらわないと物価の過熱状況は収束しない。」と述べてきた。その意味では金融引き締め効果がやっと出始めたとの解釈も成り立つ。
かくして、雇用統計の内容はまだら模様なので、6月FOMCでは利上げを見送り、これまでの金融政策の効果を点検する。その上で必要とあらば7月FOMCで利上げ再開するとの説が浮上しているわけだ。
これに対する金市場の反応だが、これまで利上げは打ち止めの可能性が強く、年後半は利下げもあり得るとの予測を織り込み上がってきた。その前提が雇用統計で不透明になってきたことで、2000ドル台回復を見込んだ投機的金買いポジションが一斉に売り手仕舞いされたわけだ(KITCOグラフ赤線、緑線参照)。
しかし、利上げ最終局面にあることは変わりない。従ってNY金は下げても底は浅い。
先週金曜日の日本時間帯ではNY金先物価格(スポット価格ではない)が瞬間的に2000ドルを突破する局面もあった。
総じて、1900ドル台で下値を試したが結局1800ドル台にまでは下げ切らず、市場の目線は再び2000ドル方向に向いているわけだ。
米国の銀行危機もまだ生々しい。米国財政赤字は債務上限が妥結したとは言え累積債務は30兆ドルという途方もない高水準にある。借金もここまで膨らむと借りた者勝ちの如き様相だ。米国の借金証文である米国債が今はトリプルAの最上ランクだが、既に格付け機関は格下げの可能性ありと警告を発している。思い起こせばリーマンショックの時も米国債格下げがキッカケで、当時史上初の金価格4桁=1000ドル突破となり注目されたものだ。
なお、円相場は米利上げ継続が示唆されるとドル高・円安の動きは加速する。但し140円を大きく超えると財務省日銀の市場介入の可能性が強い。
さて、YouTube機材の不調で週末の豊島逸夫チャンネル「雇用統計ライブ」は配信できず。
復調したので今週ライブ配信の予定。ちょっと更新間隔が空いたからね。