豊島逸夫の手帖

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金価格最高値圏に留まる最大の理由

2023年11月7日

今回の金高値は中東発有事の金買いということになっている。
確かに混迷、迷走する中東情勢が金価格の下支えになっていることは間違いない。

しかし、2000ドルを突破して更に上を窺うとなると「金融政策不信を映す金買い」という面がより強くなる。そもそも金利は一年365日、市場にジワリ効く。特にFRBが引き締めから緩和に転じる時、そしてこれは下げ材料だが日銀が異次元の量的緩和からの出口に動く時。

FRBが「利下げ」に転換する時は金利を生まない金には大きな追い風となる。
対して、いつのことか分からないが日銀が量的緩和を終了する時は円高を通じて円建て金価格の下げ要因となろう。
円建て金価格は今年の場合、NY金価格と国内金価格が同時に上げて史上最高値を更新した。しかしそんな都合の良い話はいつまでも続くことではない。局面が変わればNYドル建て金価格が下げ、円高で国内金価格も下げるという可能性もいずれくると思う。そういう意味で今年は日本人の金保有者にとって都合の良い年であった。筆者は2025年くらいが円建て金価格にとって要注意かと思っている。これは中期的な視点での話だ。

長期的視点に立てば円安基調は変わらず(これは日本経済にとってはありがたくない話だが)、国際金価格は供給面でピークアウトしてくるので、更に上昇すると見ている。おそらく中国の公的金保有が現在の2000トン程度から5000トン程度に増えているであろう。なお、供給面では二次的供給源(リサイクル)が増え、一次的供給源が減る傾向だ。但しアフリカ諸国の金生産が急増しつつあることはワイルドカードとして要注意である。それから海底金鉱脈開発の話も話題性があるが、何せ金は固体なので液体の原油のように海底から噴出してくれることはない。

需給面から見れば長期的な金の需給均衡点は3000ドル程度となろうか。

2023年