豊島逸夫の手帖

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歴史的高値圏で迷走する国際金価格

2023年4月19日

3704a(KITCO).jpg国際金価格は2000ドルを挟む展開が続いている。経済指標やFRB高官発言でストンと下がる局面もあるが、そこは直ぐに買われる。筆者の感覚ではこれほどの歴史的高値圏が維持できていること自体驚きだ。底値は拾われるので底堅い。中国の官(中国人民銀行)と民(個人投資家)の両方の買いが目立つ。今の相場を下支えしている要因のひとつと言える。

NY市場では投機筋の買いが目立つ。この連中は1週間単位くらいで売買を繰り返すので、彼らが価格形成の主導権を握ると急騰後に急落のシナリオとなる。

最近「金を今から買っても間に合うのか」と聞かれるが、手っ取り早く儲けたいという魂胆であればもう遅い。対して老後や資産相続を考えての金購入であれば、今から積立感覚で始めても決して遅くはない。日本を取り巻く地政学的環境や日本経済の今後を考えればリスクだらけだ。10年単位の人生設計の一部としての資産形成であれば金もポートフォリオに含めるべきだ。現在は歴史的高値圏ゆえまずは資産の10%を目標に始めると良い。既に始めている人は粛々と継続すればよい。あまり難しく考えずリスクヘッジとして保険感覚で保有すべきだ。

金価格が長期的に右肩上がりと言い切れる理由は供給サイドにある。世界でめぼしい金鉱脈は殆ど開発済。しかも生産コストが世界的インフレで急上昇している。こうなると世界の金鉱山は良い鉱脈を持つ他社とのM&Aを通じて経営の効率化を図るようになる。パイの食い合いとも言える。例えば足元の事例では米最大手の金鉱山会社ニューモントとオーストラリア金鉱山大手のニュークレスト・マイニングが合併交渉中だ。実現すれば円換算で2兆円を超す過去最大の金鉱山会社M&Aとなる。結局新規鉱脈開発案件は限定的なので金生産量は今がピーク。今後はジワリ減少に転じるであろう。二次的供給源のリサイクルが貴重な供給ソースになることも事実だ。

さて、今日の写真は薔薇。
ご近所の二階建てを覆う巨大な薔薇。そして我が家の白い「なにわいばら」。
マーケットという無味乾燥な存在を相手に仕事し続けていると、こういう自然の美しさが何よりの癒やしになるね。
3704b(薔薇).jpg
3704c(なにわいばら).jpg

2023年