豊島逸夫の手帖

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米国債4.5%、ギリシャ国債4.2%、これも逆イールド?

2023年926

ドル金利の上昇に歯止めがかからない。

米10年債利回りは4.5%の大台を突破。2007年以来の高水準だ。米2年債利回りも5%を大きく上抜けている。

FRBが発してきた「政策金利は高く、長く」とのメッセージを市場は半信半疑で受け止めていたが、9月FOMC参加者の金利予測でFRBの本気度を思い知ることになった。利上げ停止後は早期に緩和へ転換するとの予測も崩れた。更に念を押す如きFRB高官発言も相次いだ。シカゴ地区連銀グールズビー総裁は「引き締め過ぎのリスクより、インフレ悪化のリスクを注視」と語った。引き締めの副作用としての不況を懸念する発言で、「ハト派」と位置付けられていた人物の「転向」はサプライズであった。

更にグールズビー総裁とともに2023年FOMCで投票権を持つボストン地区連銀コリンズ総裁も「11回の利上げと8000億ドルの量的引き締めの影響が出るのに想定より時間がかかっている。消費者も企業も保有キャッシュが潤沢なのだ。」と語った。
同じく投票権を持つボウマンFRB理事はより直接的に「2%のインフレ目標への進捗状況は不十分だ。」と言い切った。
総じて米国経済の想定を超える力強さが「誤算」である。原油急騰も全米に拡大するストライキも想定外であった。

更に2024年は名目では利下げ2回が予測されているが、実質金利では利上げとなることも市場にはずっしり効いている。
更に政府機関閉鎖の可能性が極めて強くなったことで、米国債格付けをトリプルAに据え置いていた格付けムーディーズも米国債を格下げ前段階の「クレジットネガティブ」とした。他の大手格付け会社S&Pとフィッチが米国債格下げを決めたが、ムーディーズは同調せずその動きが注目されていた。米国債を見切る投資家行動が世界に拡散すればドル金利上昇は加速する。

今やギリシャに10年おカネを貸す方が金利は安いことになる。
勿論ダントツの流動性を持つ米国債と単純比較はできない。
とは言え、この珍現象も逆イールドの変異種ということか。
これだけのドル金利高でも国際金価格が1900ドルを割り込まないのは、安全資産とされる米国債への信認が低下しているからであろう。

2023年