豊島逸夫の手帖

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紅海の船舶襲撃、新たな地政学的リスクに

2023年12月20日

最近、中東の要所の紅海でイラン系フーシ派による船舶襲撃事件が連発しているが、昨日は米主導で日欧も含め、共同で対抗することが報じられ金と原油が急騰する場面があった。

大手船舶会社によれば、スエズ運河経由のルートは当面使えず、喜望峰経由のルートに変更するとのこと。スエズ運河は世界の貿易量の12%が通行する。これがケープタウン経由になると4~6週間の遅延が常態化するという。新たな供給サイドのインフレとなる可能性もある。特に欧州が直接影響を受け易いが、玉突き効果でアジアや米国への太平洋便にも波及の恐れがあるとのこと。
金市場にとっては新たな地政学的リスクなので上げ要因となった。

なお、FRB高官発言も相変わらず相次いでいる。
昨日はサンフランシスコ地区連銀デイリー総裁がウォールストリートジャーナルとのインタビューで、金融政策の軸足を価格から雇用に移す必要を論じた。これはインフレ退治に目途がついたから、今後は失業対策など雇用にも配慮する必要があるということだ。同氏のこれまでの発言とは全く異なり、金融政策の緩和への転換を印象付けた。

なお、金と同時にビットコインも息を吹き返し、FRB利下げ祭りの波に乗っている。NY市場では金より仮想通貨の上昇が注目されることもあるほどだ。スキャンダルで市場を追放されたかと思ったが、どうやら仮想通貨のETFが当局の認定を受けそうだとの情報から再び注目されているのだ。今後もデジタルゴールドと言われるビットコインと金は何かと比較されそうだ。おさらいになるが仮想通貨はネット環境があれば支払いできるので、通貨の交換性においては金より使い勝手が良い。しかし価値の保存性という面では断然金に軍配が上がる。仮想通貨に使われるブロックチェーンというテクノロジーは確かなものゆえ生き残ったと言えよう。

2023年