2023年5月22日
国際金価格はニューヨーク市場で1960ドル台から1980ドル台まで反騰した。パウエル議長発言やミネアポリス連銀カシュカリ総裁のWSJインタビュー発言がキッカケだ。
金市場の下げは米利上げ継続説台頭がキッカケであったが、利上げするにしても6月ではなく7月以降という「利上げ一回休み」説が台頭したからだ。少なくとも6月利上げの確率は下がったが、今後の様子を見て7月以降利上げに動くかもしれないという意味である。利上げ継続よりは一回休みの方が金市場にとってはまだマシというわけだ。更に市場で楽観視され始めた米債務上限問題にも冷や水が浴びせられ、これは金価格には上昇要因となった。
財政不安に関して、市場はワシントンでの大統領と議会の交渉を見つつ一喜一憂だが、そもそもの構造財政赤字体質は変わらないので金価格には中長期的下支え要因となっていることが重要だ。
一方、外為市場では138円から137円へやや円高に振れている。債務上限悲観論と利上げ「一回休み」説に反応している。
以下、中級者向けに米利上げ観測迷走について詳述する。
5月FOMCにて「最後の利上げ」が示唆されたことで6月は利上げ見送り説が有力となった。しかしその後の相次ぐFRB高官発言で利上げ継続説が無視できなくなった。更に先週金曜日から週末にかけ利上げ「一回休み(skip)」説が台頭している。
FEDウォッチによれば、6月利上げ確率が1週間前は10%、17日には28%、18日には36%と徐々に上がっていたが、その後直近では18%まで下落している。その代わり7月利上げ確率が19%に上がっている。なお7月利下げ確率が1週間前には3割近くあったが今やゼロになったことも注目される。
この利上げ観測迷走の理由を辿ると4月雇用統計に遡る。
同統計では極めて強い雇用関連指標が並び、5月FOMCで強く示唆された6月利上げ見送り論に冷や水を浴びせる結果となった。
更に畳み掛けるようにFRB高官のタカ派的発言が相次いだ。
5月15日にはアトランタ連銀ボスティック総裁が年内利下げを否定した上で、次の一手はどちらかと言えば「up」と利上げを示唆した。
更に同日にはミネアポリス連銀カシュカリ総裁が労働市場はホットでまだやらねばならない事があるとこれも利上げを匂わせた。
シカゴ連銀グールズビー総裁はハト派だが、5月FOMCでの利上げ決定は「際どい判定」であったと明かし内部の亀裂を示唆した。
更に18日にはダラス連銀ローガン総裁がこれまでの経済データでは6月利上げ見送りは正当化できないと言い切った。
セントルイス連銀ブラード総裁もFTとのインタビューで次回のFOMCでは「ダメ押し的な」利上げに動くと明言した。
その後19日にはパウエル議長がバーナンキ元FRB議長との壇上対談で「追加の引き締めが適切か何の決定も下していない」と語った。
この週末にはウォールストリートジャーナル紙のFEDウォッチャーとして著名なニック・ティミラオス記者がインタビューで、カシュカリ氏が「利上げ終了との宣告には反対する。FOMCが(利上げを)スキップすると言うのならそれも良かろう。終了と一回休みではかなり違う。」と発言したことを紹介した。
以上がこれまでの利上げ観測迷走の背景である。
これほどにFRB参加者の見解が揺れているのはそもそもCPIが4.9%と目標の2%からは程遠いこと。更に金融政策にタイムラグがあるとは言え想定以上に米国経済は底堅いからだ。個人消費もまだら模様とは言え総じて打たれ強い。18日発表の新規失業保険申請件数は先行指標として重視されたが24万2000件と3週ぶりに減少して、労働市場で解雇は増えず依然堅固であることを示した。
但し、地銀危機による与信環境の悪化が利上げ1回分程度の引き締め効果を持つとの見方も根強い。その上に6月利上げとなると引き締め過ぎのリスクが懸念される。しかしFRBは金融不安には別途緊急流動性供給で対応するとの姿勢だ。
結局、FRB側は利上げ継続の可能性が膨らみ、市場側は利下げの可能性が萎んだ。FRBと市場の間の予測の相違は0.5%から1%のレンジで大きく乖離している。
最終的にどちらかに収れんする時為替市場では大きな変動が起きる可能性があるとマーケットは身構えている。
これまで6月利上げ観測台頭の過程では138円台まで円安が進行した。
一方、今後新たな地銀不安が発覚したり債務上限交渉が泥沼に陥れば円高圧力がかかる。
この週末のNY市場でも138円台半ばからいきなり137円台半ばまで円高に振れる局面があった。
それゆえ昨年は円売り攻撃で151円まで暴れた国際通貨投機筋も今年は円安を深追いする気はない。そもそも今年は利上げ最終段階ゆえドル売りのポジションに傾いていた。ところが逆を突かれドルの買い戻しを強いられている。
筆者はFRBと市場の利上げ予測が収れんする時期を8月下旬、恒例のジャクソンホール中央銀行会議と見ている。
さて、今朝は5時から大谷翔平選手が先発するエンゼルスの試合とゴルフ全米プロ選手権での松山英樹選手の大苦戦をテレビ中継で見ていたよ。両選手ともにちょっとお疲れさん気味だね。
まだ今シーズンは先が長いから入れ込み過ぎない方が賢明だよ。
松山選手は首痛抱えているし、大谷選手はWBCからフル回転が続いているので、一時より明らかにパワーがダウンしている。そう言えば渋野選手も左手首にテーピングして痛々しい。残念だが彼女は長期休養すべき。自分もスキーやゴルフで経験あるがスポーツは怪我が一番怖い。ゴルフなどで手首を痛めたら休むしか療養法はないよ。