豊島逸夫の手帖

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米株式市場はAIバブル

2023年6月6日

今日は株式市場の話。
日本では藤井棋士がAIと対戦しつつ腕を磨いているとのことだが、米国ではAI株の代表格であるエヌビディアの時価総額が1兆ドルを超えた。同社は半導体メーカーだがゲーム機用半導体製造ラインをいち早く生成型AI(ChatGPTなど)に振り向け需要を取り込んだ。

今やウォール街の会話で最大のトピックは「エヌビディア株はまだ上がるのか、利益確定の時期か」。米国人個人投資家たちは概ね買いそびれているので「下がったら買いか」との質問が目立つ。 
罫線を重視するテクニカル系の人たちはパラボリック(放射線状)を描くエヌビディア株価について、典型的な窓が開いており早晩窓埋めの調整に動くと指摘する。
対して今回のAI株ブームは数十年に一度のゲームチェンジャーであり、まだまだ始まったばかりとの見解も根強い。そこで比較の対象になるのがドットコムバブルとの比較だ。

この旬の話題について1日にウォートン・ビジネス・スクールのシーゲル教授が「まだAIバブルの域ではない。ドットコムバブルに比し、実体のある収益に裏付けられている。AI銘柄についた火は夏の終わりまで続くであろう。バブルなら企業の基礎的価値(fundamental value)の4~5倍の株価になるが、そこまでは上がっていない。AIの時代とでも言えようか。」と経済テレビへの生出演で語り注目された。同教授は株式相場についてもメディアで積極的に発言するので人気も影響力も強いカリスマだ。筆者もウォートン・ビジネス・スクールで近代ポートフォリオ理論を学んだので親近感がある。

但し、強気派のシーゲル教授もさすがに「短期的にはやや買われ過ぎの感もある」と語り、調整局面の可能性にも言及した。時あたかもNY株式市場の地合いは不安定だ。31日にジェファーソンFRB理事の「FRBの金利据え置きは引き締め終了を意味せず」との発言が波紋を広げているからだ。6月の利上げは見送るがデータ次第で7月或いは9月に利上げを再開する可能性もあると市場では解釈された。この発言はバイデン大統領によりFRB副議長に指名されたジェファーソン現理事がFRBとしての見解を述べたのか。市場では意見が割れておりFRBの真意を測りかねている。AI銘柄も取りあえず短期的には利益確定で売られやすい市場環境なのだ。

しかし、中期的にはドットコムバブルの「西部開拓史」の如き世界とは異なるとの見解も根強い。AI開発には巨大な量のデータが必要で、規模が大きいので誰でもできることではないからだ。商業化も遥かに速く進行している。AIは労働生産性の向上によるコスト節約をもたらす。

とは言え、エヌビディア株の時価総額が兆ドルの規模に達すると既存のバリュエーション判断基準を超えた異次元の世界なので投資家サイドでも素直には受け入れ難い。
バブルか否かの議論は短期間で結論が出る命題ではなく、まだ当面続くことは必至の情勢だ。

さて、今日の写真は近くの神社で見かけた菖蒲。梅雨にふさわしい花だね。相場モニターばかり見ている目が癒されるよ。

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2023年