豊島逸夫の手帖

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中国、官民でコツコツと公的金購入

2023年2月20日

今日はNY市場が休場。
本日の読売新聞朝刊に載った原稿を以下に採録。

日本の日銀にあたる中国人民銀行が、毎月、外貨準備として金を買い増していることが明らかになりました。「純金積立」は中国の大手銀行も顧客向け商品として扱っており、筆者も、実務的アドバイスを依頼されたことがあります。
しかし、今回は、中国人民銀行が、2022年11月に32トン、同12月に30トン、2023年1月には15トンと、毎月、大量の金を買い増しているのです。同じ「積立方式」ですが、購入単位が桁外れですね。発想も「将来に備える」という意味では個人と同じです。但し、中国の場合は、米国を意識した動きになっています。

今、世界で貿易決済などに使われる国際通貨は圧倒的に米ドルです。これが中国には面白くない。そこで、貿易などで稼いだ米ドルの一部を金に換えているのです。「金を買う」という行為は「米ドルへの不信任票」になります。そもそも中国は、外貨準備保有量は断トツの世界一で3兆ドルほど。その多くが、米国債という米国の借金証文で保有されているのですから、米国債保有を減らして、「無国籍通貨」といわれる金を増やしたいと思うのは当然の成り行きでしょう。

習近平氏の長期戦略では、人民元を世界で使われる国際通貨にしたいのですが、それは未だ無理筋というもの。金であれば、そもそも中国人は文化的に金選好度が高い民族で、紀元前から金貨が使われていた歴史があります。現在、中国の外貨準備としての金保有量は2000トンを超えていますが、筆者は、長期的に、いずれ5000トンまで増やすと見ています。それでも米国の8133トンには及びません。

ちなみに、我が日本は中国に次ぐ外貨準備量(約1兆ドル)を保有しているのですが、公的金保有量はわずか846トンに過ぎません。「米ドルへの不信任票」を投じることへの外交的配慮があるのです。いっぽう日本人個人の資産運用は自由ですから、米中対立リスクへのヘッジとして純金積立で民間の金保有を増やしてゆくことは、「資産防衛」の観点から理にかなった投資行動と考えます。
なお、国内金販売価格は、今年に入り、円安効果もあり過去最高値を更新しました。金の国際価格は歴史的高値圏で上がったり下がったりしています。こういう状況だからこそ、まとめ買いは避け、日々の値動きに一喜一憂せず、地味に積み立てることが賢明なのですよ。あの、したたかな中国の中央銀行でさえ、金は毎月買い増しに徹しているのですから。

以上

2023年