2023年11月29日
NY金が一気に2040ドル超に急騰した。レンジを上に抜け、次のターゲットとしては2089ドルの史上最高値が視野に入る水準だ。
キッカケはウォラーFRB理事の発言であった。
「最近のインフレ減速は歓迎すべき現象だ。金融政策の効果と考えられる。このまま続けば、政策金利を下げることも考慮されよう。」
同氏はタカ派の主導格ゆえこのハト派的発言はサプライズとなった。しかもFRB高官として「利下げ」に具体的に言及した。パウエル議長は「利下げなど考えたこともない」とこれまで断言してきた経緯がある。
時あたかもNY市場では来年の5月にも利下げに政策転換するのではないかとの観測が主流となっている。特に、最近のCPIがインフレ減速を印象付けてから、この利下げ議論がウォール街では最もホットな話題となっている。
それゆえ、このウォラー発言で来年5月利下げ確率が30%台から60%台に跳ねたことからも影響の大きさが分かる。米債券市場の金利は急落、ドル指数も急落した。そして金にも強い追い風となったのだ。
なお、ウォラー発言の後でバウマンFRB理事が講演して、こちらは必要なら追加利上げも辞さずと語っている。従来の発言を踏襲する理事とウォラー理事の対比が鮮明だ。FRB内部の意見が割れており、まとめ役のパウエル議長も苦労しているようだ。
NY金は新たな局面に入り、これから重要な経済指標として、次の雇用統計そしてCPIが注目される。その数字次第で年内史上最高値突破の可能性も出てきた。
なお、この発言で円相場は円高に振れた。と言っても147円台だが(147円を円高と言うのには抵抗感があるね(笑))。
円建て金価格についてはこれまでのようなNY金が上がり、為替要因でも上がるというような、都合の良い話はそうそう続くものではない。それでも円建て金価格が歴史的高値圏に留まることは間違いない。
なお、現在発売中の日経マネーに付いている金別冊は筆者が監修したので参考にして欲しい。