豊島逸夫の手帖

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国際金価格史上最高値更新、週明け更に暴騰、バブルか

2023年12月4日

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先週金曜日のNY市場後場でNY金が史上最高値を突破。2100ドルに接近した。更に週明けのアジア時間帯では2140ドル近辺まで続騰を演じ、その後さすがに反動の売りに押されている。とは言え本稿執筆時点(午前9時半)では2100ドルだ。その間円相場は先週金曜日から146円台まで「円高」方向に振れているが、円建て金価格に関してはNY金急騰の影響の方が遥かに強い。

キッカケは金曜日のパウエル発言。
これまでと特段異なる発言内容ではなかったが、市場が勝手な解釈で金買い要因に仕立て上げてしまった。具体的には来年利下げを示唆すると行間で読める部分を取り上げ、ドル売りや金買い正当化に使ったのだ。例えば「引き締め過ぎと緩め過ぎのリスクはバランスが取れている」という件。パウエル議長は引き締め継続にも緩和への転換にもコミットしていないのだが、市場はパウエル氏がこれまで「来年利下げなど論外」と言ってきたので、少なくとも利下げの可能性があることを認めたと解釈した。パウエル氏にしてみればそんな解釈は心外と言いたいところであろう。しかし12月12~13日に開催されるFOMCを控え、今週からFRB高官は公的発言を禁じられる「ブラックアウト期間」に入ったので何も反論できない。ここが投機筋の付け入るところだ。言ったもの勝ちとでも言えようか。

今朝のアジア時間帯での乱高下は史上最高値圏で、ここらが売り時と見た投機筋が空売りを増やしていたのだが、逆に続騰に動いたので慌てて買い戻した、所謂ショートカバーの買いが主体だ。

短期的にはバブル的様相を強める金市場だが、大事なことは中期的に金価格が上昇トレンドにあることだ。恐らく短期的な売買を繰り返しつつ、レンジの下値を切り上げてゆくことになろう。

読者諸兄においては今の金価格が複合要因で支えられているので、一過性の上げではないということを理解しておく必要があろう。
すなわち中東・ウクライナの地政学的リスク、来年中には米国金融政策の緩和への転換、そして国際基軸通貨としての米ドルへの信認低下などにより、中央銀行が外貨準備として年間金生産量の1/3近くを買い占めるという事実。この3つの大きな要因が同時進行して影響も共振しているので、歴史的高値圏が一過性ではないということだ。因みに米国債格下げや「もしトラ」米国政治リスクも今後は強まること必至の情勢だ。

従って投機筋が引き起こす短期的乱高下に一喜一憂せず、しっかり上記のトレンドを把握すべき段階である。

週明けアジア時間のNY金暴騰現象に関しては、NYMEXを運営するCMEのHP(金先物 市場)によれば、日本時間午前10時半時点で78180枚の売買がGLOBEX(時間外の電子取引プラットフォーム)を通じて出来高として成立している。先物ベースで200トン以上の規模の売買が週明けの日本早朝の時間帯にあったということだ。これまで空売りに走っていた投機筋がストップロスの買戻しを慌てて入れたことが想定できる。含み損が急増したので追加証拠金(マージンコール)を支払わねばならず、やむを得ず損切りの買戻しをせざるを得なかったということだ。

2023年