豊島逸夫の手帖

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注目のパウエル発言、3月、5月、6月利上げ継続か

2023年2月8日

市場が注目したパウエル議長発言は聞き慣れた説明の繰り返しで特に新鮮味はなかった。とは言え同じ発言でも稀に見る雇用統計の上振れを見せつけられた直後では、市場関係者の心にぐさりと刺さるものがある。政策金利5%など到底できるものではなく、年内にも利下げ転換を強いられようとのマーケットの読みは外れた。

今や予想到達金利はFRB側が5%台半ばに上昇しそうだ。既にミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁は7日のパウエル発言の前にテレビ生出演し5.4%と明示した。総じてこれまでの「5%をやや上回る水準」から0.25%刻み利上げでもう1回分は上昇してきている。FOMC3月、5月、そして6月も0.25%利上げとのシナリオが現実味を帯びてきた。更に年後半は過去最速利上げの効果点検時期となり、場合によっては2024年まで5%台半ばの金利水準が維持される可能性がある。金融政策効果の発現には12~18か月程度のタイムラグがあるとされているが、その間に再度今回の雇用統計のように大きな振れがあれば、利上げ継続期間の予測は益々困難になる。

市場側の到達金利予測もFRB側に屈する形で「5%に達せず」から「5%超え」に変わった。10年債利回りは3.67%水準、2年債利回りは4.46%水準まで反騰してきた。不況のシグナルとされる逆イールド幅も0.8%前後とエスカレートしている。FRBの強硬利上げにより景況感が悪化するシナリオを映す現象だ。

とは言え7日の米国株は反発している。1月雇用統計の上振れを素直に良い材料として捉え、ソフトランディング(経済の軟着陸)は可能との読みが目立つ。但し株高が続くと市場環境の逼迫感が弱まり、FRBの引き締め不足と解釈されるリスクもある。

総じて悲観論で育つ債券市場と楽観論で育つ株式市場の違いが鮮明だ。

金には中期的に利上げ長期化という重しが加わった感あり。とは言え暴落後なので売られ過ぎの感が強い。

ドル円相場は今回の128円台から132円台への円安進行のプロセスで、米雇用統計の影響が日銀総裁人事という材料を圧倒的に上回った。誰が日銀総裁になろうとドル円を大きく動かすのはFRBの金融政策であるとNY市場は認識している。その背景には日銀の金融政策選択肢は限定的との読みが見え隠れする。

2023年