豊島逸夫の手帖

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中国の金準備増強

2019年1月24日

今朝の日経朝刊国際面に「中国が金保有量を拡大、探るドル離れ、為替介入響く」という記事が出ています。

昨年末に中国は久しぶりに10トン金保有量を増やし、1852トンになったことを報じています。

中国はIMF加盟国として外貨準備の金を買い増した場合は、IMFに報告することになっています。しかし正直に申告しているか甚だ疑問です。2015年には一気に600トン以上も増えたことになっていますがこれは異常。それまで買い増してきた金公的保有量をまとめて公表したと思われます。

おそらく中国は隠れ外準みたいに申告しない公的金保有が未だかなりあるでしょう。小出しに発表するのか。私はこのブログで以前も書いた記憶がありますが、いずれ中国公的金保有量は5000トンになると見ています。これが金価格長期強気説のひとつの根拠にもなります。年間世界金生産量が3200トン程度の市場規模ゆえ5000トンは大きいですよ。中国はダントツで世界最大の金生産国でもあり可能な数字なのです。海外市場で中国人民銀行が金を買いまくると目立ちますから、中国国内生産金を買い上げていると思われます。その結果、民間需要用の金供給が足りなくなり、世界最大の金生産国なのに世界最大級の金輸入国にもなっています。

いずれにせよ仮に5000トンになっても、中国の3兆ドル以上の外貨準備の中で金保有が占める割合は5%以下。欧米諸国が平均で外貨準備の60~80%ですから、まだまだ相対的には公的金保有量は少ないと言えます。

なお、金は中国政府にとって通貨政策の対象であると同時に資源政策でも重要です。「中国製造2025」の国家プロジェクトの中でスマホなどの精密機械部品に金は欠かせません。そこで金を資源備蓄する発想があるのです。

日本の金買取店で買い取られた金が中国に再輸出される事例もあります。中国にしてみれば近隣の国が金を放出してくれるなら御の字ですよね。わざわざ南アまで習近平氏が出向いてレア・メタル共同開発を進めるほどですから。日本にこのような長期国家戦略が欠けていることが不安です。みすみす中国に持っていかれるというか、中国が買い取るに任せるわけですから。

更に中国人民銀行が金保有すると目立つので、金民間自由化を進め人民に金を保有させる戦略的発想も見逃せません。要は全体主義国家ゆえ国境内に金が退蔵されていれば、いつでも供出させてハイテク需要を満たせますから。

特に金現物の保有は長期的なので、中国国内の過剰流動性を不動産から金に移す発想もあります。不動産市場で暴れる過剰流動性を金現物保有に仕向ければおとなしくなりますからね。

今日は中国と金の深ーい話でした。

さて、今年は杉花粉が酷そう。昨年猛暑だったからね。

スキー場でも雪を被っている杉の林をよーく見ると、たわわに実った杉の花粉のもとが見え隠れ~~。私なんかそれを見ただけでくしゃみが出る(笑)。3月になると(場合によっては2月から)憂鬱だよ~~。外国出張嫌いだけど花粉の季節だけは日本を離れるのは歓迎だね。何せ成田離陸直後からくしゃみがピタリと止まり、帰路、成田空港に降り立った瞬間にくしゃみが始まる(苦笑)。

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2019年