豊島逸夫の手帖

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元プラチナディーラーの独り言

2019年5月21日

私はスイス銀行に入行して外国為替貴金属部に配属され、担当がドル、円、ポンドなどを経て「無国籍通貨」金の部門に異動になり、あまりに面白くてエキサイティングでついつい長居してしまったわけです。その「金」の部門には銀、プラチナ、パラジウムも含まれ、私はプラチナ担当の時期が長かったのです。実績も残しました。スイス銀行を辞める時に、銀行からのプレゼントとしてプラチナコイン「ノーブル」を貰ったときには嬉しかったです。銀行側からは、よくプラチナ相場で儲けてくれたとの謝意が込められていました。ディーラーとして誇り高く思う瞬間でした。生涯の宝物です。プラチナ価格が2000ドルになったって絶対売りませんよ(笑)。

それやこれやで私にはプラチナに対する強い思い入れがあります。プラチナ・ラブですかね(笑)。

実はこれ、プロとしてはいけないことなのですよ。

商売物に惚れるな。惚れれば客観的な視点が失われる。ついつい希望的観測に走り勝ちだということです。上に立つ者は冷静に見る目を持たねばならないのです。

ですから私は努めてプラチナを冷ややかに見ようとするのですが、なかなかプラチナ・ラブから抜けきれません。

皮肉なことは、そんな人間が業界内ではライバル視されるゴールドの専門機関に転職したことでした。私は井の中の蛙みたいと思っているのですが、業界内では金とプラチナがライバル関係になるとされ、お互いをけなし合うような時期もありました。その中で私は日経の「私の思い出の一品」というコーナーで、件のノーブル・プラチナ・コインを得意げに出し記事化されたので、あの時は社内で懲罰委員会に呼ばれそうな雰囲気でしたよ。未だに了見が狭いと感じています。

そんなわけで私のプラチナ観にはバイアスがかかっています(笑)。

いずれパラジウムと同じように投機マネーがなだれ込み2000ドルくらいになると信じています。プラチナもパラジウムも小さな市場ですよ。その井の中の蛙たちが大騒ぎしている。私もその一匹!

原油もプラチナもパラジウムも私は需給など虚しくて見ません。

投機マネーの思惑次第ですから。

日本人は需給で説明できないと納得できず動けない民族ですけどね。

それゆえプロの視点では自分たちが動かせるマーケットという発想が強いのです。

私もNYMEXのフロアートレーダーで働き(後にも先にも日本人では私一人)現場感覚で感じる生の市場を体験しないと分からないこともあります。今は完全に電算化されてAIやアルゴ全盛なのでこの傾向は益々強まると思います。

パラジウム・バブルもそのような市場環境の激変あればこそ生じた現象なのです。

次はプラチナと信じています。

今日の写真はミッドタウン六本木虎屋の生菓子。なすび餅と宇治の里(求肥)。食べるのが勿体ないくらい。

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2019年