豊島逸夫の手帖

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NY金、史上最高値更新はあるか

2019年8月28日


金国際価格は1550ドルに再接近中。

昨日は米10年債と2年債の利回り逆転差が2007年以来の水準に達したことで株価には下げ要因となった。米国債は3か月物から30年債まで、全ての利回りがFFレート(米政策金利)を下回るという「金利沈没」現象が不安感を煽る。いずれFRBが政策金利を実勢の市場金利に合わせる方向で利下げせざるを得まいとの観測が強まる。金利を生まない金には追い風である。

市場では早くも金国際価格がいずれ史上最高値を更新するかとの議論も出始めた。ギリシャ危機の2011年9月に付けた1923ドルが史上最高値だ。気が早い話だが絵空事と片付けることも出来ない市場環境だ。

結論から言うと、ホルズム海峡封鎖と米中貿易協議決裂が同時進行すれば短期的に先物主導で最高値更新もあり得る。否定はできない。

私は冷ややかで、それは無いと思う。

既に市場はさまざまなリスクを織り込み現水準に到達している。

トランプ大統領も今以上のリスクを生じさせることは、大統領選挙視野に好ましいことではあるまい。

私がプロ目線で気になることは、市場参加者の目がNY先物価格ばかりに向き、長期トレンドを決める現物市場(ドバイ、ムンバイ、上海)には無関心なことだ。

その現物の需給がそれこそ過去最大級にまで緩んでいることは、ムンバイの現地価格が世界標準のロンドン価格に比し、1トロイオンス30ドル以上のディスカウントになっていることで検証できる。

ここまで高くなると、今年のディワリには金より銀の方が売れそうだ。銀は貧者の金である。

ディワリとはヒンズー教のお祭り日。ヒンズー暦の新月の夜(10月から11月)に行われるが、その前後はインドで金が最も売れる時期になる。何せ買い物することが縁起良いとされているからだ。

そのインドで金がだぶついているのに金価格が急騰を続けることは、需給に逆らって上がっていることになる。

リーマンショックとギリシャショックで金が急騰した時も全く同じ現象(NY買い、ムンバイ売り)が見られた。派手に上がったが派手に下がった。金バブルであった。

今回は中央銀行の金購入加速という新たな需給要因があるので、下がっても価格水準は1400ドル程度だと思う。そこはすかさず新興国現物市場で集中的に買われるだろう。その時点でムンバイのディスカウントは解消されよう。

それゆえ、今金価格動向について聞かれれば、短期的に上げのモメンタム(勢い)は続くだろうが、中期的には売りのサインが点灯している。しかし底は浅く、下がったところは買い直されると答えている。今年について言えば、今の急騰局面で行けるところまで行って、それが今年の最高値となると見ている。高値圏での波乱が年内続く。1700、1800、1900と暴騰すれば、逆V字型の暴落となろう。

投資家にはまとめ買いは避け少しずつ買い増してゆくことを薦める。今朝の日経朝刊は年金が想定通りには出ない可能性を一面で報じている。自分年「金」を真剣に考えるべき時だ。

今日の写真はインドのディワリの日に訪問した時の写真。

店頭でインド美人と並んでながーい鼻の下(笑)。

シルバーの売り場も盛況。

そして裏町の貸しビルに並ぶ金宝飾品製造工房。

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2019年