豊島逸夫の手帖

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韓国経済苦境、日本への影響

2019年11月15日

東日本大震災発生後、例えば九州の工場が東北の調達先からの部品供給が途絶えたことで、操業停止を強いられるというような事態が全国的に生じました。東北経済圏の被った直接的ダメージは約1000億円。しかしこのサプライチェーン破断による全国的損害は約11兆円と推定されています。

同じことが日本の対韓輸出管理強化についても起こり得ます。今回の震源地はサムソン電子。同社の生産品は国境を跨いで大きなサプライチェーンに組み込まれています。それゆえ仮に同社製品の供給が止まると、アジア全体に拡がるサプライチェーンの破断現象が生じるリスクがあります。

そもそも韓国は日本の輸出の7%を占めます。その影響は決して小さくありません。日韓が睨み合いを続け消耗戦となれば、それは経済大国の日本が勝つでしょう。しかし日本が被る痛手を考慮すればルーズ・ルーズ、つまり両者とも損なシナリオとなり、ほくそ笑むのは中国と言う結果になりかねません。

そもそもサムスンの調達先主要100社のうち日本勢は23社にのぼります。住友化学、SUMCO、太陽日酸、東京エレクトロン、キャノン、アルバック等々。素材や半導体製造装置メーカーです。

半導体生産は数千の精密な工程を2~3か月かけてこなすので、同じ材料でもメーカーごとに微妙な「癖」があり、調達先を変えれば歩留まり率(良品率)悪化が不可避と言われます。ですから調達先を変えるリスクを身に染みて感じているのは、ほかならぬサムスンでしょう。

遡ればサムスンは元々製糖業でした。それが1969年、今は懐かしの「三洋電機」と白黒テレビで合弁企業を興したことが電子部門本格参入のキッカケになったのでした。今でもサムスン本社には三洋電機への「謝辞」が飾られているのです。

とは言え、朝鮮戦争の荒廃から韓国が立ち直り、輸出大国となる過程では基礎的研究より実用的技術が優先されました。下請け企業を叩いて値下げさせ利益を捻出する傾向が強かったのです。

人材的にもエリート官僚への登竜門とされる「科挙」試験の受験資格は、儒教の伝統の中で特権を得てきた一部の人たちに限定されました。

ソウルの高級住宅街に住む一部の特権階級は、子息を有名塾に通わせエリートへの道が実質的に保障されているという状況。これが今回の「たまねぎ男」疑惑、不正入学などの素地となっているのです。

14世紀以来、韓国で独自の発展を見せた孔子の教え=儒教の文化的影響を除去するのは容易なことではないでしょう。韓国経済のアキレス腱とも言えます。

とは言え、日本だって受験教育優先で地味な基礎的研究が疎かにされる傾向は否めませんよね。他人事と言えないのが辛いところ。

経済面では日韓共存共益の時代があったのですから、せめて経済面ではルーズ・ルーズではなくウィン・ウィンの関係にしたいものです。

さてさて急に寒くなった。いよいよ待望のスキーシーズンも近いけど沖縄の暖かさが忘れられない~~。

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2019年