豊島逸夫の手帖

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ラガルドECB、株購入説が浮上

2019年7月24日

今や日銀が日本株の最大株主という現実。ユニクロの筆頭株主が日銀と言われると、中国のような話かと思ってしまいます。黒田日銀が量的質的緩和政策の一環として始めた「奇策」ですが、これを欧州中央銀行も導入する可能性があるという話が以下の原稿です。

25日にはECB理事会が開催される。今回は主要中銀が緩和競争を演じる中で、市場にはECBの追加緩和策について様々な憶測が飛び交っている。

まず量的緩和再開。寄合所帯のECBには各国国債購入についての制約があるが、ドラギ現ECB総裁は柔軟な対応を示唆している。

次にマイナス金利の深堀り。現在のマイナス0.4%を更に引き下げると「副作用」も懸念されるが、ドラギ氏はこの懸念について多くを語らない。

更に今年再開された資金供給オペ第3弾(TLTROⅢ)。

この追加緩和政策メニューにラガルド次期ECB総裁は「株購入」も加える可能性が市場では期待されている。

本欄7月4日付け「NY株史上最高値、金も依然高値圏」でもこう記した。

「ラガルド・マジックのネタとしてECBによる株購入の可能性は、選択肢のひとつとして市場では意識されている。既に社債は購入しているので、拡大解釈すれば株購入もあり得るという期待感を込めた議論だ。」

そして7月22日のFT紙にブラックロックCIOのリーダー氏による「ECBは株購入で欧州全体の成長を加速し得る」と題する寄稿が載りマーケットの話題となった。

「債務のコストである金利の引き下げ余地は限定的ゆえ、欧州企業の株式発行コストを下げる方に重点を置くべし。ECBの株購入は各国の経済事情を勘案して、各国政府と個別に協議の上で実行すべき。株式市場のテクノロジー・セクターを中心に教育、イノベーション、起業を対象とする。教育面では若者失業率を減らし、失われた世代を救う効果が期待できる。ラガルド氏には長期的観点から欧州の経済停滞脱却を期待したい。」と述べている。

日銀の株ETF購入にも触れ「問題はあるが恩恵をもたらす政策ツール」と位置付け、日欧の経済事情は異なると一線を画す。日本最大の株主になるほどの日銀株購入を問題視しつつ、一定の経済効果を認める意図が透ける。

かくして今後、ECB株購入の可能性に関する議論は続きそうだ。

ラガルド次期総裁デビューのお土産となるかもしれない。

特にエコノミストではないが、IMF専務理事時代に築いた広範な人的ネットワークを駆使する政治的能力がラガルド氏の強みだ。

自由な価格形成を重視する欧米市場では、中央銀行の株購入は「禁じ手」扱いされてきた。それゆえ政治力が必要な根回しには適任の新総裁誕生に市場の期待感は強まろう。

日銀の追加緩和議論にも一石を投じる可能性がある。

かくして中央銀行の株購入が広がると、いっそのこと金をもっと買ったらと言いたくなりますね(笑)。紙幣は刷れるし株は増資できるけれど、実物の金は刷れませんからね。

さて今日の写真はフカヒレ、蟹スープ入り。コッテリして蒸し暑い気候に合う贅沢な一品をいただき幸せでした~~。

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2019年