豊島逸夫の手帖

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パウエル氏「満額回答」

2019年6月5日

4日のNY市場でNY株はダウ平均500超の急騰を演じたが、金は売られず1320ドル台を維持した。粘り腰が出てきた感じだ。

マクロ市場環境は以下の通り。

パウエルFRB議長は事あるごとに「忍耐強く」を繰り返し、経済データを見つつ慎重に決める姿勢を市場に印象付けていた。マーケットにはFRBが米中貿易戦争の経済的影響を楽観視しているとの見解が流れた。焦れた市場は見切り発車で年内利下げを織り込み始めた。FRBとマーケットの金利予想水準予測には乖離が生じていた。

そのような市場環境の中で4日シカゴでFRB主催会議が開催された。パウエル氏の発言に、前回まで頻繁に使われた「忍耐強く待つ」との表現が消えて「状況により適切に対応する」に変わっていた。

この会議前に既にセントルイス地区連銀総裁ブラード氏とクラリダFRB副議長から利下げ容認発言が相次いでいたので、市場はこれを追認と解釈した。

更に市場では、米中貿易戦争に関して中国側の歩み寄りとも解釈できる意思表明が買い材料視されていた。

そこで慌てたのが株先安を見込み空売りに走っていたCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)などの短期投機筋だ。一斉に「空売り」を見切り、買戻しに動いた。ショート・スクイーズを連想させる様相であった。

冷静に見れば、ダウ平均512ドル急反騰はテクニカル要因が加速させた現象と言えよう。特に出来高が膨らんだ状況ではない。

新規買いが続くか否か。今後の展開が注目される。

大手投資銀行は相次いで利上げ観測の大転換を発表している。これまでの「利上げもあり」との予想を「年内2回利下げ」に変えた大手銀行もある。0.5%幅での利下げ予測も出てきた。

とは言え、まだ利上げ、利下げ、どちらとも言えないとの慎重な観測も見られる。

大阪G20まで方向性を測りきれないとの見解も少なくない。

更にFRB利下げの限界も懸念される。

2%台前半のFF金利水準では利下げ発動予知も限定される。パウエル氏自身、4日の講演で「1999年にFRBが開催したフォーラム」の事例と今回を比較して、当時のFF金利は5.2%で利下げが20回出来たと回顧している。更に当時は日銀が低金利水準に難儀していたがFRBには未だ遠い話だったとも語り、現在のFRB金利政策の限界を示唆している。今回のパウエル講演原稿で最も頻繁に出てくる用語はELB(金利ターゲット・レンジの下限)だ。金利がELBを下回る状況を憂慮している。この傾向は多くの民間エコノミストも共有する。

米国経済が次の景気後退期に入った時に金利政策に限界があるならば、結局量的緩和を再発動せざるを得ないとの見解もある。

市場目線では昨年は利上げ回数が材料視されたが、今年は利下げ回数が市場変動要因となりつつある。

今日の写真はミッドタウン虎屋で季節の生菓子。紫陽花。もうアジサイの季節だね~~。

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2019年