豊島逸夫の手帖

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日銀とヘッジファンドの神経戦

2019年6月19日

トランプ大統領は、大阪G20でいよいよ習近平国家主席とトップ会談の展開を語りNY株は素直に買いで反応した。ドラギECB総裁の緩和発言も歓迎され、FOMC結果発表前ながら市場は見切り発車に動いたと言える。特にドラギ氏が「更に経済が悪化すれば」ではなく「今の状況が改善せねば」動くと示唆したことで緩和切迫感が強くなった。

一方、トランプ氏のFRB批判はエスカレートしている。18日には市場に流れるパウエルFRB議長解任報道について「まずは(FOMCで利下げ決定するか)お手並み拝見。」と語った。米国経済が減速すれば米中貿易摩擦の影響よりFRBの責任を問う構えだ。

更に批判の矛先はドラギECB総裁に向けられ、緩和発言を「ユーロ安誘導。」と批判した。

「次の標的はミスタークロダか」

NY市場では早速、日銀追加緩和の可能性を探る動きが出始めた。日銀が動けば円安誘導批判のトランプツイートが飛び出しかねない情勢だ。とは言え、日銀の追加緩和余地は極めて限定的だ。マイナス金利深掘りの副作用はNY市場でも理解されており「イールドカーブコントロールを多少いじる程度がせいぜい。」などと議論されている。MMTの議論が日本では注目されていると話を向けると、そのカードは「一発レッド」で通貨安誘導との答えが返ってきた。

日銀としてもここは正念場だ。

主要中銀緩和競争に出遅れれば、ドル安・ユーロ安・円高加速は必至だ。

一方、追加緩和に動けば為替条項をちらつかされ、これまた円高要因となりかねないリスクを孕む。

短期的には7月利下げを織り込んだ市場が「噂で円を買い、FOMCで決定のニュースで利益確定売り」に走るシナリオが考えられる。

しかし中期的には円高バイアスが強く残る。

日銀政策決定会合の黒田発言ひとつで円相場が大きく動く地合いだ。

特に日本語発言が英訳されると、意図的な翻訳が見出しとして世界に流れ、市場で独り歩きするケースもある。

日銀とヘッジファンドの神経戦が展開されそうだ。

そしてNY金価格は、株と同じく利下げ先取りの見切り発車で、1340~50ドルのレンジに上昇中。

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日本時間今夜というか明日早朝のFOMC声明文とFRB最新経済見通し(含むドットチャート)発表とパウエル議長記者会見で、金融政策大転換(利上げから利下げへ)が確認される(はず)。勘所は声明文から「忍耐強く待って決める」という表現が削除されるか、前回の記者会見でパウエル議長が連発した低インフレ状態が「一過性」という単語が削除されるか。削除されればいよいよ利下げGO!のサインとなる。今夜は徹夜覚悟~~。

そして今日の写真は好物のキウイ。花と実になりそうなベビー果実。

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2019年