豊島逸夫の手帖

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ISMショック

2019年10月2日

ISM製造業景況感指数が47.8まで悪化したことで統計発表直後から市場の景色が激変した。この統計の歴史は長く、信頼性も厚く、影響力も強い。

10~12月の新期入り初日にいきなりパンチを見舞われた如き反応で、ISMショックという表現が市場には流れる。

昨年10~12月期に市場が大変動した記憶が蘇るからだ。

市場との対話に不慣れなパウエルFRB議長の利上げ・資産圧縮継続示唆発言に市場が振り回された。

今年はパウエル氏も発言に慎重になったが、トランプ大統領からの介入がエスカレートしている。昨日もISM悪化を受け「パウエルとFRBの利下げが足りないからドル高になり米国製造業が被害を受けている。パウエルFRBは情けない。敵だ。」とまでツイートしている。ISM悪化の最大理由は自らが引き起こした米中貿易摩擦なのだが、大統領選挙を視野にその責任を中国ではなくパウエル氏に転嫁している。

市場はもはや利下げしても、経営者は通商懸念が払しょくできねば、設備投資に踏み切れない事態を懸念する。更に影響がGDP本丸の消費に波及するリスクも強まる。GDP2%割れ、景気後退入り確率40%ゾーンなどの表現が市場に流れる。40%という数字にはリセッションと断言はできないが否定もできないとの意味が込められている。

それゆえ経済指標の悪化が利下げ期待を強め株価は上昇するという反応が見られなくなった。昨日は10月利下げの確率が上がったのだが「悪いニュースは良いニュース」から「悪いニュースは悪いニュース」と素直に反応するようになっている。

米中経済共倒れリスクが意識され始めた。

金価格も劇的な一日となった。

ISM発表直前には1450ドルに片足を突っ込んでいた。昨日1450ドルと書いたが、とにかく高速度取引の時代は反応が速い。

しかし発表直後から株安・債券高・円高・金高に転じた。金は1480ドル近傍まで急反騰。

金にとってはISMが救世主になったわけだ。

劇的な展開に思わず筆者も興奮してしまったよ。アドレナリンが引かず、午前3時に濃いトンコツラーメンを食べる仕儀に。相場が荒れると肉食系になるので、夕食もタルタルハンバーグ。ひき肉ではなくレアの牛肉を叩いたもので、肉以外の「つなぎ」が無い。旨い!

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2019年