豊島逸夫の手帖

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今週金曜午後1時1分、日本市場直撃リスク

2019年5月8日

やっとNY金も上げ始めた。(グラフ kitco)

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10連休前には「最終的には米中通商協議も歩み寄る」と楽観論を織り込んでいた市場の景色が10連休後の7日には激変した。米中決裂の可能性を織り込み始めたのだ。リスクオンのポジションを巻き戻し、リスクオフ・モードに転換中だ。安全性を求めるマネーが円や金買いに動いている。

対中25%追加関税発動が世界景気を冷やすシナリオが懸念され、中国銘柄以外にも売りが拡大してきた。

ダウ平均も6日にはかろうじて持ちこたえたが、7日には売り第二波に見舞われた。最後の30分で648ドル安の最安値をつけた後、473ドル安まで下げ幅を縮小して引けている。

典型的な短期投機筋の空中戦の様相だ。CTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)などのアルゴリズム売買がテクニカル指標に反応している。ダウ平均は50日移動平均線を下抜け。原油先物も景況感悪化による需要減が嫌気され50日、200日移動平均線を下抜けた。更にVIXも警戒水域とされる20を突破する局面があった。VIX先物の期近が期先より高いバックワーデーションという現象が発生している。足元でリスクの切迫感が強まっていることを示す。ライトハイザー通商代表が「米国東部時間10日午前12時1分に25%への追加関税を発動」とトランプ大統領のツイートを再確認したことが効いている。劉鶴中国副首相がワシントンに到着して通商協議で議論するのも実質的に9日だけということになる。

このような状況で、新債券王と言われ発言がダウ平均を動かすこともあるグンドラック氏が「米中決裂の確率は50%以上。トランプ、習近平両氏は後に引けない。」と語った後にダウ平均の下げ幅が600を超えた。

「It's not pretty.」日本語に訳すと「ヤバイ」という表現がヘッジファンドの間で飛び交う。

対中となると、ワシントンの米議会でも超党派で共和党・民主党両議員の中から「安易な妥協は避けよ。」と強硬意見が出始めた。

トランプ政権内でも穏健派とされるムニューチン財務長官よりライトハイザー通商代表など強硬派が優勢だ。

大統領選をにらみ、株高を自らの功績と自画自賛するトランプ大統領も今回ばかりは短期的株安を辞さずの構えだ。

国内産業界からは強い懸念の声もあがっている。中国に部品の生産拠点を持ち、米国で組み立てる米企業幹部からは「25%関税は壊滅的被害。」、「組み立て工程をメキシコに移す。それに伴い米国内の雇用が失われる。」などの発言が聞かれる。

しかしトランプ大統領は支持率上昇、米国経済成長率3.2%、雇用統計で失業率約50年ぶりの3.6%などの数字を背景に強気の構えだ。

筆者は10日午前12時1分の「最終期限」が延長されると見る。もし上海株価と人民元が共振して急落すれば、世界株安連鎖のリスクが強まり、さすがにトランプ、習近平両氏も見過ごせまい。

とは言え、ライトハイザー氏が「中国は約束違反。」とまで語っているので予断を許さないことは確かだ。フェア(公正)ではないとの表現は特に米国人の心に響く。フェアープレーの精神を貫くための犠牲は厭わぬという心理に流れやすい国民性である。

なお、円高だが米国債も安全資産として買われ、ドル金利が下げ傾向なのでドル安・円高に振れがちな市場環境である。

NY金は1270ドル台で下げ止まり、1280ドル台に戻した段階。

そして今日の写真は富士山麓で蕎麦。寒かったけど旨かった~。

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2019年