豊島逸夫の手帖

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中国の報復懸念、金1300へ急騰

2019年5月14日

先週10日金曜日までは市場も未だ「急転妥結」の淡い期待を抱いていた。トランプ大統領が「交渉継続」と語れば、中国製品が5月10日以降船便で出荷され米国の税関を通るまでの数週間、話し合いの余地ありと希望的観測が語られた。

しかし週明け13日の市場に楽観論は消えていた。アジア時間からダウ先物は時間外で180ドル安をつけていた。その後、欧州時間には下げ幅が400ドルまで拡大した。そしてNY市場寄り付き後、一気に600ドル安を超え一時は700ドル安まで下げた。その後は500ドル安から700ドル安の低いレンジで終始。結局617ドル安で引けた。本日のアジア時間帯でも、ダウ平均時間外取引は下げを示している。

結局、追加関税発動当日10日金曜日に市場を直撃するはずだった売り攻勢が時間差で13日の市場を襲った感がある。

マネーの流れも安全資産3兄弟と言われる米国債・円・金に流れている。米10年債利回りは2.4%まで低下。円相場は109円接近。金は節目の1300ドル大台を回復しつつある。(kitco グラフ参照)

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対中融和派とされるムニューチン財務長官が10日には「交渉が建設的。」と発言して市場は急反発した。しかし13日には「二国間の交渉継続。訪中も検討中。」と語っても、もはや市場ではオオカミ少年扱いだ。

何よりマーケットが心もとなく感じることは、頼りのFRBに動く姿勢が見られないこと。パウエル・プットが期待できない。5月FOMCでパウエル議長が繰り返した「足元のインフレ率低下は一時的。」との発言で金融緩和への期待感が薄れている。そもそも利下げ余地が2%強しかない。クラリダFRB副議長も13日に「中立金利が低水準となり、景気後退時の景気下支えが困難。」と発言している。

これまで株高を自画自賛してきたトランプ大統領も、頻繁なツイートの中で一転株価に言及しなくなった。市場は対中圧力を強めるために株安容認の姿勢と受け止める。

それどころか株売りを誘発する如き発言が目立つ。

曰く「中国は2020年大統領選挙で民主党が勝てば、通商交渉も振り出しに戻ると期待しているようだが、そうはさせない。私が勝つ。二期目には中国側への要求がより厳しくなることを覚悟せよ。関税を回避するため多くの企業が中国を脱出している。中国が報復しても無駄なことだ。」

そして国内向けには「必要な輸入品は中国以外の国から調達せよ。」


大阪でのG20で習近平氏と会談と明言したが、これまで裏切られてきたと感じているマーケットは成果に懐疑的だ。

市場の注目は人民元安だ。オフショアでは対ドルで6.94前後の水準まで人民元が売り込まれている。節目となる1ドル=7人民元超えの人民元急落が視野に入る地合いである。人民元相場が危機的水準になれば、さすがにトランプ大統領も交渉妥結の方策を模索するとの期待感も市場内には流れる。

米中ともに情勢判断を誤ったフシがあることも、市場内に不安感を醸成させている。

「事務方は合意署名の式次第まで検討に入っていたのにトランプ大統領がちゃぶ台返しをした」、「そもそも中国側は米国側の要求を受け入れ実行するための国内法律改正などに手を染める気はなかった。通商協議を開催して参加することに意義があった」、「中国側はトランプ大統領のFRB批判を米国経済の脆弱性の表れと見て米国側と妥協に持ち込めると読み違えた」などの報道が市場内の話題になっている。

トランプ大統領の支持率がギャロップ社調査で46%まで跳ね上がることは中国側の想定外だったであろう。

団長格の劉鶴中国副首相の肩書から今回は「特別大使」の名称が外れ、全権大使として臨機応変に交渉できないことも米国側から見れば想定外と思われる。

そもそも劉鶴氏は交渉人タイプではない。個人的に習近平氏と親しく信頼厚いゆえに抜擢された人材だ。

なお、貿易戦争の武器は関税だが中国側は貿易量に限界があるので実弾が不足している。そこで非関税の戦術として巨額保有する米国債の売却がかねてから噂されていたが、いよいよ政府系新聞が「アカデミックに議論されている」と報道されるに至った。筆者は中国の外貨準備が減価するので自分の首を絞めるような策ゆえ無理筋と思うが市場は言及されるだけで動く。万が一実行されればドル金利急騰、それも悪い金利上昇ゆえドルの信認が薄れ円高要因にもなる。特に投機筋にとっては格好の材料となろう。

市場の不安感を示すVIX指数も一旦落ち着いていたが、13日には一日の上げ幅として記録的な30%近い急騰を演じ、再び20の警戒水域を突破している。

人民元、VIX、円、金に同時に波乱警戒のシグナルが点灯した。

市場には今更5月は売りなど悠長なことは言っていられない緊迫感が漂う。

明日、フジテレビ系列の「とくダネ!」にスタジオ出演します

 

2019年