豊島逸夫の手帖

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香港政府の賭け、束の間の薄日に市場は警戒

2019年9月5日

香港行政長官は「逃亡犯条例」撤回という切り札を使った。デモ参加者が要求する「普通選挙の導入」は中国政府が絶対に譲れない条件ゆえ切り札にはならない。

対するデモ参加者の間には「平和的抗議活動では条例撤回を引き出すことはできなかったであろう。過激抗議行動が効いたのだ。今後も先鋭化した抗議デモを続けるべき。」との見方が少なくない。

習近平氏は国慶節前に最悪の事態は回避できた。しかし一国二制度が揺らぐことは断固許容できない。早晩本格介入の決断を迫られる時期が来ると市場は懸念する。

トランプ氏は当面安堵しているであろう。中国政府の人権蹂躙(じゅうりん)行為が発生すれば看過できず、米中貿易協議も中断は必至となる。これは米国側も本音では回避したい。一方、香港情勢緊迫の長期化は望むところであろう。米政権の香港介入を示唆という「取引カード」を温存できるからだ。

リスクは一部の過激派がこれまで以上の強い抗議活動に走り、偶発的に死者が出るなどの事態に発展することだ。習近平政権も直接介入を迫られよう。今回の香港の抗議デモは明確なリーダーを欠き、参加者が多様化している。それゆえ鎮圧も容易ではない。

それゆえ地政学的リスクに敏感に反応する国際金市場では、条例撤回発表直後は一時1530ドル台まで急落したのだが、その後買い直され「危機ライン」と見做される1550ドル台攻防という展開になった。NY金市場ではここが正念場との緊迫感が漲る。

習近平政権の根源を揺さぶる事態になりかねないので、ブレグジットやイラン問題より重要視されているのだ。過去にも数々の地政学的リスク勃発の過程で、安易な政治的妥協がかえって混乱状態を悪化させる事例を見せつけられてきた。それゆえ「束の間の薄日」に警戒感を強める姿勢が顕在化しつつあるのだ。

今日の写真は「梨」のムース・ゼリーを使った涼味デザート。

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2019年