豊島逸夫の手帖

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トランプ大統領訪日直後、NY株急落のワケ

2019年5月29日

28日の日米首脳共同記者会見での質疑は北朝鮮、イランなど多岐に亘ったが、NY市場が注目した発言は米中貿易摩擦関連のトランプ発言だった。

「中国は(貿易協議で)合意したがっているが私達にはその用意がない。関税はどんどん急激に容易に上がり得る。」との威嚇発言の部分だけが市場を独り歩きしている。新華社通信の「中国は米国の要求を受け入れない」との強硬論調を意識したと解釈されている。

米中悲観論が強まり、米中経済共倒れが世界経済減速から失速を誘発しかねないとの警戒感からマネーは株から米独国債に流れた。特に将来の経済見通しを映す指標とされる米10年債が買われた結果、利回りが2.26%まで急落したことが株売りの引き金となった。この水準は現在の米国政策金利(FFレート)の下限2.25%とほぼ同水準だ。

ダウ平均も朝方は131ドル上昇したが、その後ほぼ一貫して下げ続け237ドル安で引けた。

円も安全通貨として買われ、NY市場で109.30台まで円高が進行した。

NY市場のトランプ大統領訪日に関する評価は、日本での「おもてなしムード」に比し至ってクールだ。シンゾウ・ドナルドの仲をもってしても日米通商の溝は埋まらずと語られている。

6月G20への期待感も剥落してきた。米中関係は悪化しており、トランプ・習近平両氏も国内強硬派への配慮から、うっかり通商首脳会談には持ち込めないとの悲観的観測が浮上している。

特に単なる関税引き上げ合戦から、ハイテク覇権争いという両国ともに絶対譲れない命題に移行しつつあるので長期化は必至だ。

世界経済の縮小均衡を覚悟した市場は「守り」の姿勢に入っている。

FRBが利下げという助け舟を出すことに、極めて慎重な姿勢で「忍耐強く見守る」スタンスを強調していることも不安材料だ。

欧州議会選挙後の欧州市場では、10月に任期が切れるドラギECB総裁の後任人事が不透明要因だ。

安倍首相の「米国大統領との蜜月演出外交」も「日本経済は依然デフレモードから脱却できず」との市場の厳しい評価を変えることは出来なかった。

なお28日には5月の米消費者信頼感指数が前月比4.9ポイント上昇して18年11月以来の134.1という高水準を記録したが、米中悪化前の遅行指標と扱われた。

一方、5月のダラス連銀製造業景況感指数がマイナス5.3と大きく落ち込んだことは材料視された。

市場は株売りの口実探しの如き様相である。

それにしても金は1270~1300のレンジにはまって不動の状況。これぞ安全資産。とは言え連日、金関連の取材が相次ぐ。先が読めない時は金!という発想だ。

そして今日の写真は朝乃山優勝パレード。

業界では知られた顔が後援会長で同乗~~~。

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2019年