2019年2月25日
カリスマ投資家ジム・ロジャーズ氏が来日。連日メディアでインタビュー記事や番組が流れた。
ジムと言えば「金」。投資の神様が最後に辿り着いた究極の資産が「金」である。それだけに説得力がある。シンガポールの豪邸には金製品コレクションが並ぶ。
そして10年来の友人として感じたことは、彼の見方がほぼ一貫してぶれていないことだ。
今回は特に時節柄、彼が次の投資対象として北朝鮮に注目していることが話題になったが、これは4年前からの彼の変わらぬ自説だ。朝鮮半島が統一され、日本の手ごわい経済的ライバルになるとの主張を最初に聞いた時は、日本人としてかなりの抵抗感を感じたものだ。その頃から、あの手この手で北朝鮮への投資手段を模索していた。この先見性はバイクでの世界冒険旅行で醸成された彼独自の「体感」に裏付けされた、生来の「動物的臭覚」による。いわゆる「天才肌」であろう。統計数字を並べた「秀才」アナリスト流の語りではなく、易しい単語を使って分かりやすく説明するのがジム・ロジャーズ流だ。それゆえ世界中の個人投資家に人気がある。NY証券取引所のフロアで彼とテレビ対談中に、たまたま訪問していた中国人投資家集団にサインをせがまれ囲まれ往生したこともある。日本で富裕層向けセミナーが開催された時には、参加料が数十万円(100万に近い)でも多数が聴講していた。
来日した後には、必ず自分の英語の発言が正しく日本語で伝わったのか筆者に確認してくる。
今回は日本株を昨年秋に売却した件が話題になった。筆者のこれまでの理解では、長期的に日本株と円には弱気派だが、短中期では情勢次第で柔軟に対応するはずだ。今朝たまたまチャットした時にそこのところを確認したのだが、やはり「あれはあくまで長期的見解」ということであった。「少子高齢化で外国人労働者にも抵抗感が強い国」の稼ぐ力が弱まるというのが口癖だ。筆者がシンガポールの豪邸に経済対談のため赴くと必ずのように「君!シンガポールくんだりまで経済の話するくらいなら、もっと子作りに励め。君の国に最も足りないことだろう。」と彼独特の語り口で諭す。とは言え、何らかの理由で日経平均が暴落するような局面があれば買い出動する用意がある。彼が売却したという日本株ポジションを買った日は東日本大震災当日であった。日本株買い注文を入れた後、その晩は日本への応援の気持ちでシンガポールの日本料理屋に家族全員で出向いたという。今後、日銀の出口戦略で株ETF保有の後始末が市場を揺らす時には買うかもと呟いたことを覚えている。中国に関しても債務問題など気になることだらけだが、基本的に中国株は長期保有の姿勢だ。そもそもこれからは中国の時代と宣言して米国から移住してきた。「米国だって、バブル、バブル破綻を経て長期的に成長してきた。中国も例外ではない。」と語る。
今後の投資先として、今回はベネズエラとかジンバブエを挙げていたが、これも「Buy disaster」(災害は買い)との彼の投資信条に基づく。8年前、誰も目をくれなかったミャンマーに着目して、その後ミャンマーブームになると「混み過ぎてきた」のでサッサと売り払った。ウクライナ侵攻でロシア株・ルーブルが暴落している時にせっせと買いに走り、トランプ政権誕生直後のロシア株急騰局面ではいち早く手仕舞っている。そして現在は再び経済制裁対象国ロシアに注目している。
更に、次の投資先として彼はカザフスタンに着目していて、スタッフにカザフスタン人を雇用するほどの熱の入れようだ。確かに一帯一路の要衝で資源国だとして有望だ。しかし今回は多くを語らなかったので尋ねたら「次の(訪日の)お楽しみ。」とかわされた。
最後に彼の投資に最も影響を与えている人がいる。
それは二人のティーンエイジャーの娘さんたち。
76歳の御大の孫ではない。中国語学校に通っていた頃は、毎日午後3時には自家製リヤカー状の乗り物で出迎えするのでインタビュー時刻も3時を外してと言われたものだ。こうなると普通のお爺ちゃんと変わるところはない。それゆえ彼の投資も「全ては可愛い娘たちに残すため」。「金」も全て娘のためと言って憚らない。ジョージ・ソロスと一緒に元祖「ヘッジファンド」を立ち上げ大成功を収めたのだが、今や超長期投資家に変身。たまに市場が大きく変動すると参入してくるのだ。
写真は、アラバマの片田舎出身でウォール街で初めての職場だったというビルにて。
そして今日の写真は雪の上で食べるバレンタインチョコ。これが適度に冷えて格別な味。豪徳寺の「SUDO」のはゆけるね(笑)。