2019年9月10日
本欄8月22日付け『ドイツ「金利沈没」の衝撃』にて言及したドイツ30年債利回りがマイナス圏からプラス圏に再浮上している。9日は同利回りがプラス0.02%水準まで上昇する局面が生じた。債券市場では金利反転を象徴する出来事と見られている。
総じて「株売り、債券買い、ドル・円買い、金買い」のポジションが巻き戻されてきた。
金市場でも先週、心理的節目の1550ドル台で投機的売り方と買い方が激しいスクラム戦を演じた。買い方が勝てば1700ドルも視野、売り方が勝てば1400ドル台まで逆戻り。「天下分け目の戦い」となったが、結果は売り方が押し切り、9日には1490ドル台まで下落の局面も見られた。こうなると再高値更新のハードルは高い。1550ドル台が今年の高値となった可能性がある。
金は金利を生まないので、沈没したはずの金利が水面下から再浮上すると敏感に反応する。
なお、プロ目線での売りシグナルであるロンドンとムンバイの価格差(スプレッド)は依然1トロイオンス46ドル近傍のディスカウント状態が続いている。主要現物市場のムンバイでは高値買い控え傾向が強い。足元の金価格下落で現地貴金属店店頭にも客足は戻ったが、総じて個人の売戻し(店の買い取り)の方が多い。
プロが現物市場ムンバイに注目するのは、ここで買われた金は長期保有されるからだ。NYの先物買いポジションが積み上がっても早晩売り手仕舞いされ、通年ではゼロサムゲームとなる。しかしインド・ドバイ・上海などで購入された金現物は買いっぱなしゆえ、通年で金価格水準を底上げする。
因みに中国とインドの二か国で年間新規金生産量の6割前後を毎年買い占めている。短期的価格傾向を決めるのはNY先物市場。しかし中長期の価格形成主導権は新興国の現物市場が握るのだ。
後者はレバレッジがかからず、一日の売買量は先物市場に比し少く地味なので、素人の投資家の目線は派手なNY市場に向きがちだ。
それゆえ木を見て森を見ずの罠に陥る傾向がある。
さて、マクロで市場を俯瞰すれば、米中貿易摩擦由来の世界景気減速懸念と主要中央銀行の緩和比べを織り込み、世界的金利下落が加速した。そして今週からECB理事会、FOMC、そして日銀政策決定会合と所謂「中央銀行ウィーク」が始まる。既に「なけなし」の追加緩和を織り込んでいるので、更なる市場金利低下にはサプライズ的緩和政策示唆・発表が必要だ。然るに金融政策の「新たな威力ある弾薬」は見当たらず、金融政策の限界が意識されている。
市場の期待は専ら財政出動余力を残すドイツの財政政策だ。伝統的に財政規律が厳しいお国柄ゆえ、気候変動対策などの大義名分で正当化できる分野での財政支出が現実的なシナリオと見られている。更に米国ではムニューチン財務長官が示唆している50年債、100年債発行案やMMT理論に漂う政治色などが意識される。
今後は金融緩和・積極財政というポリシーミックスの現実味を市場は吟味することになろう。
さて、豊島逸夫の札幌「食い倒れ」ガイド、その2。
今日は札幌イタリアンの元祖的存在TAKAO。
ここもシェフのセンスと北海道ならではの旬の素材が素晴らしい。
写真は、コーンと黒トリュフのパスタ。デザート。そして積丹直送ウニパスタ。
ゆったりとした雰囲気の中でソムリエ兼サービス担当のとても感じの良い女性の説明などを聞きつつ、札幌の友人夫妻と和気あいあいと夕食することが夏の恒例行事となっている。
昨年も紹介したことがあるが、早速ブログ読者が訪れたそうな。
金の話より食べ物の話に説得力があるな(笑)。
それから台風の影響で成田空港に1万7千人が孤立して一夜を明かしたという話。他人事じゃないね。私も色々な苦い体験から旅行中はおにぎりとかサンドイッチと水だけは常に携帯して、何が起きてもいいような覚悟はしている。スーツケース紛失などは日常茶飯事ゆえ、下着・薬など一式一日分も必ず手荷物で持つ。私の最悪の体験はロンドン・ヒースロー空港で72時間濃霧が続き足止めを食らったこと。霧が晴れ次第出発、その時は先着順ということでずっと空港ホテルに今か今かと待機。遂に3日間滞留する羽目に。最初から3日かかると分かっていれば市内に戻っていたのにね。