豊島逸夫の手帖

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ウォール街でも「こんまり」が注目

2019年4月24日

今や全米で安倍首相より知名度が高い近藤麻理恵さん。

Kondo-ingという新語も認知されてきた。

この「こんまり」現象はウォール街から個人まで広範な投資家層にも影響を与え始めている。

ポートフォリオの「こんまり」化だ。

知り合いのヘッジファンドも、売買収益が極めて不安定な市場環境ゆえ資産配分の見直し整理が欠かせないと言う。間口を広げ過ぎたので間引きして、保有理由が希薄な銘柄は売り払うと言う。特に「未公開株=PE」には流行り廃りがあり、ブーム時に買ってそのまま保有してきた銘柄は「こんまり化」の対象になる。

年金基金の場合には、ひとたび買い付けた銘柄を売却するためには基金内で相当の理由付けが必要となり、運用担当の手腕が問われ売りにくいのが実態だ。

なお、筆者に言わせれば組織の「こんまり化」の方が重要だと思う。今やCO2とCOOは削減対象とウォール街では揶揄される時代だ。日本でも「働き方改革」の恩恵を享受しているのは上の連中で、私が付き合っている現場の人たちは結局、家庭に持ち帰って仕事を片付けている。高給取りの幹部社員の社内人口比率が異常に高い事例が多い日本企業こそ、近藤麻理恵さんを人事担当アドバイザーに招聘してばっさり切り捨ててもらうが良かろう。株式市場でも「近藤銘柄」が実現すれば人気化間違いなし!

個人投資家層でも、スプレッドシートに全保有投資対象を一覧状態にして無駄な資産保有はバサッと切り捨てるのが「こんまり流」だ。

親から譲り受け、なんとなく持ち続けてきた資産・銘柄はないか。個人的未練ゆえ惰性の保有になっている投資も意外に多いものだ。

「ときめく」ような銘柄を探すのは至難の業だが、ときめかない時に無理して投資する必要もないとの割り切りも必要だ。完全を求めず、多少なりとも「ときめき」めいた心の揺れを感じられる会社であれば捨てずに残しておくという緩い発想でも良いと思う。

アラサー女性たちとの対談で、理想の配偶者を株の銘柄に例えると「ジャスダック」、「マザーズ」との答えが返ってきた時の記憶も鮮明に残る。筆者は当然「一部上場優良銘柄」かと思いきや、それは「愛人対象」で夫には「未知数だが将来の夢が描ける人」が好ましいのだそうだ。因みに「二部上場」は遠慮したいとのことであった。

国も会社も男も信用できず、やっぱり個人的に資産防衛せねばという勇ましい女性もおられた。

かくいう筆者はと言えば、面倒くさがり屋で、なんでもほったらかし。職場でもデスク上の書類が時々表層雪崩を起こす。家庭内ではお父さんはだらしがないと極めて不評な人物である(笑)。

それゆえ自らの投資も「ほったらかし」。こんまりの教えは耳が痛い。

筆者が特に共感を覚えるのは「こんまり」流の整理整頓で家族や友人たちとの人間関係も明るくなることだ。捨てるものでも愛おしむ心は忘れずにと説く。

投資の世界でも自分のための資産運用だと、日々の値動きに一喜一憂する「ガツガツ型」になりがちだ。対して愛する人のための投資だと、切羽詰まった感覚がなく心に余裕が出来て結果も良くなるという好循環が期待できる。愛する人の対象は配偶者でも親でも子供でも孫でも兄弟でもよい。

 

 

2019年