2019年8月27日
「連日の市場大変動。最も注目する指標は何か。」
ウォール街のヘッジファンドへの問いかけだ。
最も多かった答えは「米10年債とドル円」。
「VIX」を予想していた筆者には意外な答えであった。
円も「出世」したものだ。
欧米の外為市場で最も取引量が多い通貨ペアはドルユーロである。
しかし現場では「円は安全通貨」としての認識が広まり、市場の不安感を計る指標として定着しているのだ。
その円は104円台から106円台に急反落。
市場のリスクオフムードがひとまず後退している。
その理由は「トランプ大統領の変心」に尽きる。
先週金曜日には「敵」と語った習近平氏を、昨日G7後の記者会見では「素晴らしい人物」と持ち上げた。
「電話で話した。」とも語ったので、すわ「緊急トップ電話会談か」と市場も色めき立ったが中国側は否定。トランプ氏も「ムニューチン財務長官が常に連絡を取っている。」と述べ、とにかく両国のコミュニケーションは継続していることを強調した。「貿易交渉は米国優勢で中国は取り引きしたがっている。」とも語っている。
米中悪化を予想して株空売りに走った投機筋は慌てて買戻し。
円の投機買いに動いた通貨投機筋は売り戻しを強いられた。
一般投資家はトランプ氏の真意を測りかね、模様眺めを決め込んでいる。
トランプ大統領に心境の変化の兆しが見えたのは、週末に記者団から「考え直す気はないのか。」と聞かれ「誰でも考え直すことはある。」と答えた時だ。しかしホワイトハウスはすかさず「あの発言は、もっと追加関税を高く設定すべきであったとの意味だ。」との釈明を発表していた。
とは言え、米中歩み寄り姿勢にはトランプ氏も習近平氏も貿易戦争は早期に片付けたいとの本音が透ける。
トランプ氏は貿易戦争に手間取る印象を有権者に与えたくない。
習近平氏は中国経済悪化に歯止めをかけねばならない。長老たちとの北戴河会議でも、早期決着せよと釘をさされたことは想像に難くない。長老たちが最も嫌うのは失業増から生じる社会不安だ。人民元相場も今のスピードで急落が続けば、資本逃避や国内輸入物価上昇など悪影響が優るは必定だ。
市場はそこまで読んでトランプ氏の変心を歓迎しているわけだ。
とは言え、債券市場はまだ信じきれないように見える。長短金利が再度逆転したからだ。
株式市場は楽観論で育ち債券市場は悲観論で育つもの。
とは言え、不安心理を測る「ドル円」が円安方向に振れていることがNY市場でも安堵感を醸成している。
NY金の価格変動も激しくなっている。
グラフをご覧いただきたい。
まず青線が先週金曜日。ジャクソンホールでのパウエル講演前には1490ドル台まで沈んでいた。それがトランプ氏の報復関税発表で一気に1530ドル近傍まで急反発。対中追加関税の詳細が金曜のNY引け後に発表されたので赤色の日曜には時間外だが1550ドル突破。しかし緑色の昨日月曜日は米中対話再開で1520ドル台まで下落した。私の見解は1500ドル以上は警戒水域。日経ビジネス取材でもそう話した。↓
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/082200623/
特にドバイ、ムンバイ、上海の主要現物市場で現地価格がロンドン世界標準価格に比し20ドル以上ディスカウント(割安)になっていることが気に入らない。要は東京も然りだが貴金属店の店頭は新規買いより売戻しの方が多いから、金市場の需給はじゃぶじゃぶだぶついているのだ。それでも上がるのはNY先物主導だから。
プロの視点では中期的だが売りサインが点灯している。短期では未だヘッジファンドの投機買いが優勢だが。