豊島逸夫の手帖

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ハロウィン、市場を揺らす魔女の正体

2019年11月1日

市場はもとより「日銀ハロウィン緩和再現」を期待していなかった。31日の黒田会見もマーケットはスルーした。

ところが欧州時間に入り円高という魔女が突然出現。108円台で70銭ほど円が上昇した。

キッカケは日本時間午後6時前後に流れた外電報道だ。

「中国、米中長期合意に懐疑的」という内容だった。「中国側の条件は追加関税発動延期ではなく追加関税撤回」との見方も市場には流れる。

この影響はNY市場にも飛び火。

ダウ平均は一時200ドル超急落。引けにかけ戻し140ドル安で引けた。

トレーダーは縁起担ぎが多い。NY市場では「ウイッチ・タイム=魔女登場の時間」などと気味悪がられた。

FOMC後のパウエル記者会見も今更のように市場で蒸し返された。

記者会見直後にはパウエル発言の中で「インフレ率が大幅回復せねば再点検して利下げ再開も」の示唆が重視された。殆どの市場関係者はインフレ率が近い将来に大幅に上昇するなど考えられないからだ。それゆえ利下げ依存症の市場は安堵した。

ところが昨晩、米中通商不安再燃で市場がリスクオフ気味に振れると、「当面利下げ打ち止め」を示唆したパウエル発言が市場では不安要因として再浮上したのだ。

経済統計面でも10月シカゴPMIが43.2と約4年ぶりの低水準に落ち込んだ。

一方、中国の10月製造業PMIも49.3と拡大・縮小の節目となる50を6か月連続で下回った。

米中貿易戦争により両国の製造業が疲弊し需要の落ち込みが鮮明だ。

トランプ氏も習近平氏も米中共倒れだけは避けたいところ。

トップ会談で米中貿易交渉「第一段階」文書化合意を目指していた。しかしトップ会談が予定されていたチリ開催のAPECサミットが突然キャンセルになった。雲行きが怪しくなったところでトランプ氏はすかさず「米中で合意署名の代替候補地検討中。第一段階は全体の60%を占める。」とのメッセージを発した。市場ではマカオ、フロリダのトランプ氏別荘などの候補地が取沙汰される。

中国側も経済統計悪化に歯止めがかからず、この上に追加関税発動は避けたいところだ。本音は「第一段階」だけでも合意の機会を伺っている。

双方強い表現で牽制しつつ、歩み寄りのタイミングを探る瀬戸際状況が続く。

本日は10月の米雇用統計とISM製造業景気指数という最重要指標が発表される。中国側も注目の姿勢だ。数字が悪ければ米中交渉で有利に立てる。

一方、トランプ氏は悪ければ責任をFRBに転嫁の姿勢だ。「問題は中国ではなくFRBだ」とのツイートを31日にも繰り返している。

31日の米経済テレビには、トランプ氏が空席のFRB理事候補として指名しているジュディ・シェルトン氏が登場して今回のFOMCを解説した。トランプ氏がFOMCに送り込む「魔女」的存在ゆえ市場の注目度も高かった。イエレン前FRB議長を彷彿とさせる丁寧で穏やかな口調だが論調は手厳しい。FRB理事職にもやる気満々を隠さない。パウエル議長には手ごわいFOMC参加者となりそうだ。

今週SP500株価指数新高値更新に湧いた市場だが、今年のクリスマスラリーはいつになく国内・国際政治色の強い展開の兆しが顕著だ。

NY金は1510ドル台まで急反発。

かくして昨日本欄で書いた如く、株を買った人がヘッジで金を買い正解であったという事例となった。金のヘッジ機能も口で説明してもピンとこない。このような実例が最も説得力がある。

さて、私のハロウィンは相場荒れて肉食モードなのでカボチャでは淡泊すぎる(笑)。最近好みの熊本産赤身肉(高たんぱく、低コレステロールで旨い)のステーキとガーリックライスでガッツリ。3連休も仕事詰めなのでエネルギー補給。癒しは台湾開催の米国女子プロ参戦中の渋野日向子プロ。Youtubeで中継画像を見たけど日本でのプレーよりはるかにリラックスしてモグモグタイムも絶好調。ずっとモグモグプレーしていた。ショットも日本より明らかに切れている。

今発売中の日経マネー筆者連載コラム第94回もタイトルは「シブコの活躍に見る女性勝負師の時代」。彼女はトレーダーとしても立派にやってゆける資質を持っている。そのワケを書いた。

 

 

2019年