豊島逸夫の手帖

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世界最古の旅行代理店、突然の破綻

2019年9月24日


創業178年、世界最初の旅行代理店とされる英国トーマス・クック社が突然破綻。航空会社も傘下に持つ。空港にはいきなり「トーマス・クック破綻のためフライトキャンセル、ツアー中途解散」の告知が表示された。
60万人ものツアー客が海外で突如足止め。
英国政府は同社を救済しないが、15万人の英国人ツアー客を帰国させるべくチャーター機を手配した。最大級の緊急輸送作戦だ。


破綻の原因はブレグジットの影響もあるが、何と言っても海外旅行客の変化。今や旅行代理店の支店で担当者の説明を聞きながら決めるツアー参加は古いビジネスモデルだ。ネット経由でフライトでもホテルでもレンタカーでも自分で予約できる。ツアーのネット化に出遅れた。


既に経営は悪化していたが、そこに救済の手を差し伸べたのが中国資本だ。復星国際(フォースン・グループ)という中国投資会社が最大株主となり、今回も9億ポンドの救済資金を提供していた。この中国企業の傘下には地中海クラブ(クラブメッド)も入っている。中国人中級層の海外旅行需要を視野に入れた動きだ。
しかし更に2億ポンド追加が必要となり、その時点で手を引いた。
既にギリシャ、スペイン、マルタ島などに多数の足止め客が発生している。


一方、ライバルの格安航空会社やネット系旅行手配会社の株価は急騰している。
更にCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という破綻の損失を補填する(破綻すると価格が上がる)保険商品があるのだが、トーマス・クック社のCDS価格も急騰。このCDSはヘッジファンドが投機的に売買するので大儲けしている。

一方、インドではトーマス・クックの現地法人がトーマス・クックのブランドを買い取り国内営業に使うという動きも見られる。


実に色々な意味で興味深い、そして筆者の如くスイスで新婚時の旅行にトーマス・クックを使った者には、時代の流れを感じるセンチメンタルな出来事であるよ。


さて週末は「金特集」が色々。
まず日経ヴェリタスでは「めざせ 金投資マスター」。
マスターでも苦労してるのよと、つい突っ込みたくなる見出し(笑)。
楽天証券の協力でのシミュレーションで収益率首位は金ETFとなった。そこで私のコメント。「金の投資商品にはそれぞれ一長一短がある。個人の投資目的や相場観、人生設計によって最適な商品は異なる」。本当は「こんな1年間の収益率だけで良し悪しを決めるな。金は儲けるものではない。じっくり貯めるものだ」という意見なのだけど、あの週刊投資媒体には馴染まないのだね(笑)。


次に、これも週末発売の日経マネー最新号。
「金投資、成功のコツ 持っておきたい守りの資産」


なお、同誌の連載コラム「豊島逸夫の世界経済の深層真理」では「緩和競争が生むマーケットの"怪現象"」。これは異常なマイナス金利について。


そして、足元の金相場は1520ドル台まで戻した。


FOMC通過して1500ドルが分水嶺。底堅い。今週はFRB地区連銀総裁の講演が目白押し。昨日は今回のFOMCで反対論(利下げ幅を0.5%にすべしと異論)を唱えたブラード・セントルイス連銀総裁が、超ハト派らしく米国経済悲観論(=もっと利下げ続けないと米国経済は大変なことになる)を語っていた。次は超タカ派の講演かな。。。パウエル議長も板挟みで大変そう。


最後に、渋野日向子凄いね。
奇跡の8打差逆転勝利。これで世界ランク14位から11位へ。畑岡奈紗が7位から6位へ。東京オリンピックに向けて盛り上がってきたね~~。でも夏の埼玉の霞が関カントリークラブで観戦するのは焦熱地獄だろうね。冷房の効いた部屋でテレビ観戦が一番!

それにしてもシブコの笑顔には癒されるね。彼女を嫌う人はいないのでは。前にも書いたけど強気に攻めて、外したときのリスク対応能力もありトレーダー向き人材でもあるよ(笑)。

2019年