豊島逸夫の手帖

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関税引き上げ合戦からハイテク覇権争いへ

2019年5月28日

トランプ政権がファーウェイ社への禁輸措置に動いたことで、米中経済冷戦は新たな局面に入りました。もはや関税を10%から25%に引き上げ、対して報復関税を課すという単純な図式ではありません。AI、ロボットなど先端分野を征する大国が世界を征することになります。そこでG20はもはや無力。米中のG2で覇権争いが展開されるのです。

ファーウェイ社のケースは対象分野がスマホ、携帯通信基地などで、特にそこで使われる次世代通信規格5Gが核心です。この最先端分野ではファーウェイなど中国が米国より優勢ですから米国も必死なのです。そこでファーウェイ社の製品を通じて情報が中国へ駄々洩れになるという「安全保障上の理由」による米国製部品供給禁止措置を発動したのです。

因みに「米国安全保障上の脅威」は日本車にも適用され、今後の日米貿易協議では米国の日本車輸入数量規制が視野に入ります。日本車が米国の安全保障を脅かす存在かとの素朴な疑問も湧きます。理由はこうです。日本車が米国内に輸入され購入されると、米国製自動車が売れなくなり儲からなくなった米国自動車メーカーは研究開発費を削る。自動車の基礎技術は軍事面にも転用されるので、米国安全保障上の脅威になるという論理なのです。どうなんでしょうね。。。しっくりきませんが。。。単に米国車を米国消費者が選択しないからでしょう。。。

安全保障上の脅威の事例としては、中国の鉄道車両メーカー「中国中車」の事例もあります。ニューヨークの地下鉄車両部品製造を受注したのですが米国側が待ったをかけました。地下鉄に使われる「監視カメラ」を通じて米国内情報が中国側に流れる可能性を危惧しているのです。中国はチベットなど少数民族監視のために監視カメラ技術が発達したという人権問題も絡みます。

話をハイテク覇権争いに戻しましょう。

スマホ以外でも米国が制裁に動く分野としては、ロボット、高度なデジタル制御の工作機械、航空、宇宙、海洋エンジニアリングなど「中国製造2025」国家戦略の重点分野が今後対象となる可能性があります。

米国側の言い分としては、中国はこれら最先端分野の国営企業に巨額の助成金を与え国を挙げて支援している。これは民間の自由競争の上に成り立つ自由主義経済では不公平だというわけです。ここは理解できます。しかし全体主義国家中国がこの核心分野育成について譲歩することは絶対と言っていいほど無いでしょう。

かくして米中ハイテク冷戦が顕在化してきました。

日本も立ち位置を明確にしないと、世界は日本抜きで前進してゆくでしょう。ジャパン・バッシング(苛め)ではなくジャパン・パッシング(頭越し)ですね。

因みに金もハイテク製品部品には重要な素材ですから、産業用需要は今後も増えてゆくでしょう。そこまで睨んで中国は日本国内で買い取られ輸出されるリサイクル「金」を貪欲に買い集めているのです。レアメタル等で国家戦略のある国とない国の差が鮮明ですね。日本も金の国家備蓄を真剣に検討すべき時でしょう。国が金塊を買って、穴を掘って、タイムカプセルみたいに埋めておけばいいのですよ(笑)。

なお米中経済戦争で人民元や新興国通貨が売られているという産経新聞の記事でコメントしています↓

https://www.sankei.com/economy/news/190526/ecn1905260006-n1.html


そして今日の写真は見事に池に映った「逆さ安達太良山」@メンバーになっているボナリ高原ゴルフコース。週末の下界は35度でも、ここは標高1000メートルを越し25度の別世界でした~~。名物の湿原にあるパー3のホールには早くも「アヤメ」が咲き始め。

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2019年