豊島逸夫の手帖

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FOMCと中東緊迫でNY金1360ドル超え

2019年6月20日

予想通り、FOMCで緩和への金融政策転換が決まり、これで金の天敵=利上げは消えた。その安心感と中東緊迫の合わせ技でNY金は急騰中。

株も6月FOMC終了前夜の18日にダウ平均は米中歩み寄りを歓迎して353ドル急騰した。19日もFOMC金融政策が緩和方向へ転換が確認され57ドル上昇して引けている。

かくして、株価が最高値水準に迫っている状況での金融緩和という成り行きとなった。

市場が緩和熱烈歓迎モードで先走っているのか。

或いは、やはりパウエル議長がトランプ大統領の執拗なまでの利下げ要求に屈したのか。

まず、今回発表されたFRB経済見通しの中のドット・チャートでFOMC参加者の2019年末金利予測分布を見てみよう。中心値2.375%が8人。1.875%が7人。現在のFF金利水準である2.25~2.5%のレンジが年末まで続く、つまり利下げは無しと見ている参加者と、1.75~2%のレンジ、つまり0.25%刻みの利下げが2回と見る参加者が拮抗しているのだ。NY市場ではこの状況がスプリット(分裂)と表現された。

米中貿易摩擦が合意に達すると見る楽観派と悲観派が、FOMC内ではっきり分かれているイメージが想起される。

なお、ドット・チャートについてはパウエル議長自ら注目度が高すぎると警鐘を発している。米中会談がどうなるか未だ分からない状況で、金利予測しても詮無いことというのが本音であろう。

要は、FRBもG20大阪での米中トップ会談、そして来月の雇用統計の結果を測りかねているのだ。

それでもNY市場は連日の株高を演じた。

米中合意なら7月利下げの切迫感は薄まる。それでも貿易摩擦改善と利下げと「いいとこどり」で市場は動いている。

FOMCで年内利下げ無しと見る7人は、水平線上にバブルの雲を目視しているのだろうか。或いは、ここで利下げに動いてはトランプ大統領の思うつぼゆえ、政治的独立性を標ぼうする中央銀行の矜持を見せつけたのか。景気が悪くなれば米中貿易摩擦ではなくFRBがスケープゴートにされかねないとの危機感も伝わってくる。

更に、FRBの内部事情も揺れている。

パウエル体制になり初めてFOMC内で反対者が一人出た。セントルイス連銀のブラード総裁が今回のFOMCで利下げ決定を主張したのだ。

総じて、利上げはFRBが主導するが利下げは市場が主導する傾向が強いとマーケット内では語られる。緩和を催促する市場に、FRBが期待に応えることから、バーナンキ・プット、イエレン・プットなどと言われてきた。しかしパウエル・プットはトランプ・プットと言われかねない。FRB内部がスプリット状態にあるだけに、トランプ大統領が実質的に最後の一票を握りかねない情勢である。

なにやらバブルの匂いも漂う市場環境で、金価格は上昇傾向だ。

一言で言って、今、金には「売る理由」がない。ドル金利下げモード。外為市場ではドル安。しかも、中東の地政学的要因は激化の様相。

米中トップ会談で合意されれば、中国経済には良い材料で中国国内の実需は増すであろう。

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それから講談社の現代マネーに、インタビューの談話が載った。

題して『中国・習近平がトランプに完全敗北する日』

いかにも週刊誌っぽい見出しと文体だね(笑)。私のスタイルだと本能的に自制が効いているから、自分で読んでみてへぇーーという感じだよ。↓

https://gendai.ismedia.jp/money

 

2019年